第61章 【烏と狐といろいろの話 その2】
その後、客人3人は通された別室で寛(くつろ)いでいた。
縁下兄妹は茶を入れに台所へ行っており、姿がない。
待っている間、ふと北はそうやと呟いて卓に持ってきた簡易のスタンドを置き、スマートフォンをそこに立てる。
程なく画面を操作してメッセージアプリを起動、ビデオ通話モードでとある連絡先にかけた。
待受中の効果音がしばらく流れ、やがて
「ああ、信ちゃん。」
北の祖母、結仁依が応答、画面に映った。
「ごめん、ばあちゃん、急に。大丈夫やった。」
「大丈夫よお。」
「とりあえず、無事着いたから報告と思て。」
北はスマホに向かっていい、画面の向こうの祖母は良かったとニッコリと笑う。
そこへ
「あ、おばあちゃん、こんにちはー。」
横から侑が入る。
「ちわース。」
治も加わる。
「こんにちは。相変わらず元気やねえ。」
北結仁依はこれまたニコニコである。
「おばあちゃんもめっちゃお元気ですやん。」
「当分長生きやな。」
「信介の結婚式、絶対見んとねえ。」
「ばあちゃん、気ぃ早いて。」
北がやんわりと祖母に突っ込んだところで
「お待たせしました。」
「お茶入りましたよー。」
戸を開ける音と共に縁下兄妹が入ってくる。
「あ、すみません。お電話中でしたか。」
力が慌てるも北はかまへんよ、と言って兄妹を手招きする。
「ばあちゃん、お世話になる縁下君と妹さん。」
突如紹介された兄妹は人の電話の前で慌てながらもきちんと座って挨拶をする。
「初めまして、縁下力です。」
「あ、私、妹の」
「ままコちゃん。」
「侑さん、それハンネっ。あ、えと、妹の縁下美沙です。よろしくお願いいたします。」
北結仁依はこちらこそ孫をよろしく、といった挨拶を返して、ふと画面越しから美沙に視線を合わせる。
「可愛らしい子やねえ。」
「ありがとうございますって、いやいやそないなことっ。」
また初対面の人に思わぬことを言われた為、正座をしていた美沙が飛び上がりそうになる。
後ろでは宮兄弟が笑いをこらえ、隣では義兄が微笑んでおり、北は特に表情を変えず
「せやろ。」
なんと祖母の言葉を普通に肯定してしまった。