第61章 【烏と狐といろいろの話 その2】
「ノートがダメになったってわかってからすぐに親が。周辺機器は自分の小遣いでちまちま揃えたみたいですけど。」
力が答えると北はそれはそれは、と呟く。
「随分意思決定が早いな、親御さん。」
「美沙には絶対必要だろうって。」
「わからんでもない。」
実際その後の縁下美沙が辿った道により、両親の決定は正しかったと証明されたわけだが、それはまた別の話である。
「しかし机のこと置いといても事務所みたいな部屋やなあ。」
侑が見回しながら言う。
「はて。」
美沙は疑問形で言って首をかしげた。
ベッドには義兄の仲間、田中龍之介からもらったでかいキノコキャラのぬいぐるみが寝ているし、本棚の空いているところには同じくキノコキャラや好きなバレーボール漫画の関連グッズが少しばかり飾ってあったりする。
世間的な女子っぽさはないにしろ、事務所はないやろ、と本人は思っていた。
「ゾッとせんけど俺もツムに同意。」
治も言う。
「特にそこの棚。めっちゃファイル入っとるけど、あれなんなん。」
「あ、絵コンテもどきの塊です。」
「なんて。」
「絵コンテもどきの塊。」
「いや、復唱せえって話ちゃう。」
「アランくんおらんせいでサムが突っ込みに回った。」
「なんやったらご覧になります。」
言いながら美沙は本棚からファイルを引っ張り出し、ドサドサと床に置いた。
「ごっついな。」
北が静かに呟くが、実際言われても仕方がない量である。
ファイルに綴じられたB5相当のルーズリーフの束、1冊辺りの厚みは時折出る少年漫画のファンブックくらいはある。
その相当分厚い束が4冊ほどと来た。
「でも絵コンテもどき描き出したん途中からやから、そんな」
「いや、充分やから。」
美沙が言い終わるより早く侑が突っ込む。
「見てええか。」
ここで北が尋ねてきた。意外にも興味を持ったのか。