第61章 【烏と狐といろいろの話 その2】
とはいえ、なんだかんだ荷物を解いて客人は落ち着き始め、次の瞬間にはこれまたとても希少性の高い光景が繰り広げられていた。
「え、ままコちゃんの部屋すごっ。てか机すごっ。」
侑が声を上げる。
「普通や思いますけど。」
部屋の主はボソリと呟く。
「その机のどこが普通なん。」
治に言われるも美沙は食い下がる。
「今日日パソコン持ってるのそない珍しないでしょ。」
「いや、あないごっついのはそうない。」
「ほう、まるで配信者やな。」
北があまり表情を変えずに妙なところで感心しているのが面白い、かもしれない。
「あ、たまにライブもやってます。」
「せやったな。」
「兄が一緒やと同接(同時接続数)ちょっと多いです。」
「美沙、余計なこと言わなくていいから。」
「お兄ちゃんも人気か。将来カップルチャンネルとかいうのやったらどないや。」
「あの、北さんも乗らないでください。」
「冗談や。」
「そう来られるとは想定外でした。」
ここで侑があれ、と呟く。
「ままコちゃん、持ってたんノートやなかったっけ。ライブで言うてたやろ。」
「よう覚えてはりますね、侑さん。」
「脳みその容量割当おかしいから、こいつ。」
「しばくぞ、サム。」
「お2人共、暴れたら追い出しますよ。」
「ごめん、ままコちゃん。で、今あのごっついデスクトップやけどノートのほうどないしたん。」
「つい最近とうとうあかんようになったんで、そこの棚になおしました(片付けました)。」
「こき使(つこ)たからか。」
「ちょお、治さん。」
「だってそうやろ、絵描いて動画編集して、編集したもん書き出して、ライブもやってたんやろ。」
「あのノート、よう頑張ったなあ。」
「なんやろ、間違(まちご)うてへんけど宮さんズに言われると釈然とせん。」
「諦めな、美沙。実際ダメになる直前、編集画面のカクカクが尋常じゃなかったろ。」
「作りかけやったから、もしバックアップなかったら詰みやった。」
「用意周到な妹やな。しかしようこんだけ揃えたもんや。」
ハンドルネーム・ままコの机に鎮座するデスクトップPCやモニター、その他周辺機器を見つめながら北が言う。