第59章 【王者の恩返し】 その6
「あの、お仲間もああおっしゃってるので、そろそろにしていただいて。」
「美沙ちゃんは相変わらず私服はふわふわ森ガール系なんだね。」
「窮屈なん嫌いやもん、ってとにかく離してー。」
「人の話聞いちゃいないな、この人。美沙、大丈夫だから甘えたになるのは我慢して。」
「俺に手伝えることはあるか。」
細かいことは理解できないまでも縁下兄妹や及川の周りが困っていることは察したようだ、とうとう牛島が申し出る。
「その、お手数おかけしますが。」
力は遠慮がちに呟いたが
「問題ない。手早く済まそう。」
牛島は本心から何とも思っていないらしい。
「及川さんが岩泉さん達が言っても聞かないモードになってるので力づくで剥がしていただけると。俺じゃ恥ずかしながら。」
「わかった。」
「ちょっ、ウシワカちゃん何っ。」
ふいに牛島に両腕を掴まれた及川が叫ぶ。
しかし
「頼まれごとを遂行(すいこう)するまでだ。」
牛島は淡々と答えて、次の瞬間には美沙に絡みついていた及川の両腕を引き剥がしていた。
及川が「あ」に濁点が付きそうな声を上げ、そのすきに縁下力が義妹を引き寄せる。
「兄さん。」
「大変だったな、お疲れ様。でもスリスリも我慢して。」
義妹はチラと烏野、白鳥沢、青葉城西の面々が凝視している方に視線を走らせてから渋々頷いた。
「あ、牛島さん、ありがとうございます。えらいお手数おかけしまして。」
「俺からもありがとうございます。助かりました。」
「俺は問題ない。寧ろ」
牛島に横目で見られて及川は大変不満そうな顔をする。
「俺に問題ありって言いたげじゃん。」
「実際その通りだろがっ。」
岩泉が高速で及川の後頭部を叩いた。
「マジですまん、牛島。うちとこの大ボケ野郎が。」
「以前から苦労が多そうなのは察している。」
「面目ねえわ。」
「はい、及川はもうこっち来ようね。」
「ちょっとまっつん、なんかおじいちゃん的扱いやめてっ。」
「無駄に元気な分じさまよりもタチ悪いんじゃね。」
「マッキーもひどいっ。」