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【ハイキュー】エンノシタイモウトこぼれ話

第59章 【王者の恩返し】 その6


「美沙ちゃああああんっ。」
「ふっぎゃあああああああっ。」

とうとう美沙は飲食店で叫ぶという愚行を犯してしまった。
しかし無理もあるまい。
及川が人目も何もかも完全無視で美沙を抱き締めているのだから。

「ありがとう、及川さん超嬉しいいいいいいっ。」
「どういたしまして、せやけど離してっ。」
「あん時強制見学だったのにそんなちゃんと見ててくれてたなんて感動っ。」
「そこまで言うてもろたら逆におおきに、兄さん助けてっ。」

義兄以外は抱っこ禁止を公言している身の上で義兄以外の男子に抱っこされてはたまったものではない。
美沙は義兄に助けを求め、義兄はもちろん即行動する。

「ちょっと縁下君、何すんのさっ。」
「それはこちらの台詞です、人の妹を許可なく抱っこしないでください。」
「もはや嫁ちゃんの間違いでしょー。」
「それはそれとして本人が嫌がってますので。」
「嫁は否定しないのか。」

縁下力に天下の牛島若利が突っ込むという珍事が発生しているが、当の力はそれを流している。

「なんでもよろしいわ、とにかく助けてえ。」

今日日、関西人でも高校生で「よろしいわ」などと言わない。
丁寧な表現だが古風極まっているのはやはり祖母に育てられていた美沙ならではか。

「とりあえず美沙を離していただけますか。」
「やだ、もうちょっと。」
「私の方が嫌やってばー。」

美沙の語尾がどんどん伸びてきている。
甘えたモードに入り始めているのか。
ただでさえ叫んでしまっているのにそれはまずい。
第一に力が恥ずかしいし、美沙も恥じ入って当分学校以外の外出を拒否しかねない。

「及川っ、てめえいい加減にしねえと人前でもぶっ飛ばすぞっ。」
「おい、しまい目にままコ泣くって、いい加減離してやれって。」
「ていうか俺らも過去一恥ずかしいんだよね、ほら離してあげなよ。」

岩泉、花巻、松川も当然身内の不始末をなんとかしようとするが、それでも及川は聞かない。
逆に意固地になっている節すらある。
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