第59章 【王者の恩返し】 その6
「これは私のせいちゃう。」
及川達が行ってから美沙は即座に主張した。
「いや、明らかままコさんのせいでしょ。」
きっちり月島が嫌な顔をして返す。
「いつも言うてるやん、好きで引き寄せてへんもん。」
「それで言えば俺達もエンノシタ美沙に引き寄せられていることになるのだが。」
「牛島さん、これ真面目に対応されなくても大丈夫なやつです。」
真面目に天然でボケる牛島に、力が静かに突っ込みを入れる。
「てかままコちゃんもさぁ」
明らかに面白がっている調子で天童が口を挟んだ。
「せっかくイケメンにモテてんだから、そんな嫌がらなくても。むしろラッキーじゃね。」
「兄さん以外に抱っこされとない。」
「一途なのネ。」
「そもそも今まで文化祭やらなんやらで及川さんの様子をご覧になってるでしょう。」
目が死んでいる笑顔で力が言う。
「あれで美沙が嫌がらないとでも。」
「おー、コワ。」
天童はおどけて肩をすくめ、しかし力はとはいえ、とすぐに付け加えた。
「恩も多分にあるんですけど。」
「複雑なのネ。」
なんかよくわかんないけど、といった様子で天童が一区切りつけたところで
「しかしよりによってこのタイミングで及川とは。」
澤村が苦笑しながら呟く。勝手について来た立場とはいえ、この後(あと)混沌とするのが明白なのだ。
心中は察して余りある。
「私、今の食べかけ済ましたらもう帰った方がええような。」
過去に一人では食べていけないかもしれない危機を経験している為か、出てきたもの・頼んだものを食べ切ることは美沙の大前提だ。
フードロス軽減に貢献出来ているかもしれない。
「早食いは体に良くない。」
牛島が真面目に口を狭むが、この場合だとその正論はただボケただけに聞こえてしまう。
力が受け流して言った。
「申し訳ないけど美沙、もう間に合わないよ。」
受付を済ませた及川達が近付いてきていた。
皿に残っていた炒め物や唐揚げを食していた美沙はそれらを飲み下しながら、うええと言いたげな顔をしている。
周りに固まっている烏野•白鳥沢両陣営もほとんどがこれから混沌発生が確実なので大半が固唾を飲んで見守っていた。