第10章 【関西弁の色物】
「ハ、何で。」
「声しか聞いてへんからどんなんか知りたい。」
「はぁ。」
影山は不思議そうにしつつも携帯電話を操作して写真を呼び出す。いつだったかチームの連中プラス縁下美沙で出かけた時の写真だ。
「この後ろの方のスマホケース下げてる奴。で、隣りが兄貴の縁下さんっす。」
「何やその、兄妹揃って地味やな。黙っとったらままコちゃんはあないおもろいとはわからんわ。」
「こいつギャップがすげーんで。」
解説する影山に宮はへーと面白がりすぐにあ、と呟く。
「それとこの子の連絡先教えて。」
「ハアアッ。」
これには影山も声を上げた。
「何でっ。」
「おもろかったらもっぺん喋りたい。」
「嫌っスっ、俺縁下さんに殺されるっ。」
「殺されるて兄貴も妹大好きか。」
「あの人は普段優しいし落ち着いてっけどままコ絡むと人が変わるんすっ。」
「必死やなぁ、飛雄君。」
宮はフッフと笑い影山は当たり前ッスと叫び、そうして夜は更けていった。
一方縁下美沙は自室でその義兄にとっ捕まっていた。
「珍しく音声通話してたみたいだな、どうしたんだ。」
「あ、間違(まちご)うて影山に電話かけてもてついそんまま。」
「珍しいな。でもあんま邪魔するような真似をするなよ。」
「うん。あとね」
「どうした。」
「影山と話してる途中に影山と一緒に合宿しているいう他所の学校の人と喋ってもた。って、兄さん顔顔っ。」
縁下美沙はひぃぃとなっている。義兄、縁下力の顔から明らかに表情がなくなっているからだ。
「今度はどこの色物に好かれたんだ。」
そこから急にニッコリ笑う義兄だが逆に美沙はそれが怖くて仕方ない。
「いきなり色物認定なん兄さん、それに好かれてるかどうかわからへんよ。」
「大体お前に興味を示すのは色物だしコアなファンになっているケースがほとんどだし。」
「いや確かに食えへん人っぽかったけど」
あうあう状態になる美沙に義兄の力は更に笑顔で圧力をかけた。