第10章 【関西弁の色物】
「向こうから電話切った。」
「そうすか。でも何で宮さんがあいつの名前。」
「飛雄君が固まってる間にちょい話してん。」
「俺のケータイっ。」
「ええやん、向こうからかけてきたんやろ。にしてもおもろい子やなぁ、もしかして飛雄君の彼女か。」
ニヤリとする宮に影山は激しく動揺する。
「違うッスっ。」
「そない大声で否定せんでも。」
「あいつが彼女とかありえねーっす。」
「何や、嫌いなんか。」
面白がって次々と聞く宮に影山はそうじゃなくてと一瞬視線をそらしてしかしすぐに戻した。
「嫌いじゃないっす、確かにパッと見とっつきにくいけど喋ったら全然。何気に親切だしスマホとかパソコンにつええし。でもあいつは縁下さんが、兄貴が大好きだから。だから俺とか他の奴の彼女とかありえねーっす。」
「ちょお待って飛雄君、さらりと言うてるけどそれヤバない。」
宮でなくても普通はそう思うだろう。だがしかし影山飛雄はキョトンとした顔で首を傾げており流石の宮もこの子大丈夫かと考えた。
「ヤバくねーっす。」
「何で。兄妹なんやろ。」
「そうっすけど。」
「ブラコンとかいうレベルちゃう気がするんやけど。」
「そういう事はよくわかんねーけどままコと縁下さんは血が繋がってないんで。」
宮はああと呟く。やっと話が見えてきた。
「あの子がポロッと今の名前になってからとか何とか言うてたんはそれか。」
「あいつ親居なくて、ばあちゃんに育ててもらってたけどばあちゃんも死んで縁下さんの妹になったんす。」
「なかなか壮絶やな、呑気そうな感じやったけど。」
「つかままコじゃなくても関西弁は回りくどいっすね。」
「飛雄君もなかなか言いよるな。それよりさっきからままコて何なん。」
「あいつが動画投稿すんのに使ってる名前っす。」
「うお、そっち方面の子か。」
「苗字だと先輩呼び捨てにしてるみてぇな気分になるし、何か名前ってのもやりにくくて。」
「どんだけ照れ屋やねん。」
「照れてねーっすっ。」
「ところでそのままコちゃんの写真ある。あったら見して。」
いきなり変わった話に当然と言うべきか影山はまた首を傾げた。