第10章 【関西弁の色物】
宮は聞き逃さなかった。今の名前になったて何やと思う。
「それよりええと、そもそも私影山の電話にかけとるハズやのに何で宮さんが出てはるんですか。」
「ああ、おもろいから俺が後ろから声かけたら飛雄君固まってもて。」
「影山が固まるて相当の事態やな。」
縁下美沙とやらの呟きはため息混じりである。
「いずれにせよそれやったら私一旦電話切りますわ。元々私が間違って電話かけてもたんが発端やし。すみません、失礼し」
「あーまだまだ、ちょお待って。」
この子おもろそうと思った宮は思わず被せていた。
「せっかくやからこんまま話そ。」
「せやけどそれ影山の電話、電池なくなってまう。」
心配はそっちなのか。
「人の電話の電池心配するんか。」
「だって長電話したら減りますやん。今回は私からかけてるから通信料はともかくとして。」
「自分何かズレてる言われへん。」
「うちの兄さんとかチームの人に半分ボケ言われる。他所の学校で天然言うてきた人もおった。」
「半分ボケか、そうかぁ。」
「何ですのん。」
「ん、別に。言い得て妙や思て。」
「何やのこの食えへん人。とにかく私もう切ります。お時間頂いてすみませんでした、影山の事よろしゅう。」
「あ、ちょ。」
宮は言うが受話口からはツーツーという音が聞こえる。今度こそ縁下美沙は電話を切った模様だ。
「きっちり言いたいこと言うてから切りよった、おもろいなぁ。」
宮が呟く後ろでようやっと影山が動く気配がした。
「あ、え、宮さん。」
「ああごめんな、飛雄君。はい、ケータイ返すわ。」
「うっす。あれ、ままコは。」
「ままコて縁下美沙ちゃん。」
「あ、はい、そうっす。」
聞かれた影山は素直に答える。