第53章 【Sorry for Dali その6】
その頃烏野高校男子排球部の面々は、義妹を迎えに行くと言って走り去っていた縁下力の後ろ姿を見送っていた。
「美沙さんも毎回大変だよな。」
成田が呟く。
「あんだけ抵抗してるってのに兄貴が聞きゃしないんじゃあ。」
苦笑する仲間の横で木下がだなぁ、と言った。
「超ブラコンの妹が抵抗してるってのに動かねぇ縁下が時々恐ろしいわ。」
「それよりよ」
今度は田中が口を挟む。
「お前ら縁下が迎えに行く時露骨にやべぇって態度に出てたぞ、大丈夫か。」
「そういう田中と西谷も菩薩顔だったじゃん。」
成田に言われて田中がぬぐっと言葉に詰まったところで
「だってよ、」
言うのは西谷だった。
「あの様子じゃ帰ってから美沙大変だろ。」
「西谷がそんなとこ着目するなんて意外だな。」
「久志、今回ばっかは俺にもわかるぞ。帰ったら力のヤツ、絶対美沙とっ捕まえたまんまにする。」
「うん、お前もうそれ以上喋らないで。」
「成田の言う通りだぜ、俺も何か怖くなってきた。」
「やりかねないもんなぁ、縁下は。」
2年仲間達はまた額に汗を浮かべてお互い顔を見合わせる。
この時一緒にいた1年と3年もまた、ほぼ全員が縁下美沙の無事を祈っていたという。