第51章 【Sorry for Dali その4】
「なななな何だよ。」
動揺しながらもそう口にしたのはせめてもの茂庭の抵抗か。
「あー、確かになぁ。」
花巻が言った。
「及川よりは断然安心出来るしな。」
きょとんとする茂庭に対し、及川以外の青城の面々はうんうんと頷いている。
美沙は、せやろ(でしょう)、と思いながらパスタを食する。
「ちょっと何、俺だけすんごい疎外感っ。ねぇ美沙ちゃん聞いた、何とか言ってやってよー。」
「こらっ、美沙さんまだ食べてるんだぞっ。」
「ちょっと茂庭君、俺と美沙ちゃんのスキンシップを邪魔しないでっ。」
「縁下君から守ってやってって頼まれてるんだよ、そうじゃなくても迷惑行為だろ、ついでに言うとスキンシップは和製英語だからな。」
「ご丁寧に教育的指導もありがとねっ。」
「おー、さすが鉄壁を統べてた男。」
「まっつん、そこじゃないっ。」
「茂庭さん、褒められてますよ。」
「うん美沙さん、あれは褒められてるって言うのかな。というか、」
ここで茂庭はヒソヒソと美沙に言った。
「申し訳ないけど早いとこ食べて出ようか。」
美沙は頷く。
2人にほうっておかれた及川がみんな酷いあんまり過ぎるなどとブーブー言っているが、岩泉に引きずられて元々座っていた席に戻されている。
が、一連のカオスのせいで、他の客がこちらに注目していた。
長居は無用である。
そうして2人共高速で食事を終えた。
「ごちそうさまでした。」
揃って手を合わせている律儀さがそれこそ兄妹のようである。
「出よっか、美沙さん。」
「はい。」
いそいそと上着を羽織って鞄を取り上げる美沙、席に戻った及川がじーっと見ているが気が付かないふりをする。
「美沙ちゃーん。」
未練がましい調子で呼ばれているのも無視、岩泉が黙れともう一回殴っているらしき音がした。
そして美沙と茂庭が店を出ようと及川達がいるテーブルの側を通り過ぎた時である。