第51章 【Sorry for Dali その4】
「結局何なの、旦那がいるのに浮気してるの。」
涙目で岩泉に殴られた頭をさする及川を横目で見ながら国見が口を開く。
金田一がおい国見っとパターン通りに慌てるが美沙は美沙でじろっと国見を見返す、勿論食べながら。
「話聞いとったん、国見君。兄さんも承知やっちゅうに。」
「友達の振りして実はって事もあるだろ。」
「発想が不健全な件。」
「ハ、お前に言われたかないね。」
「何で私が不健全なんよ。」
「兄妹なのに仲が深すぎ。」
「今も兄妹やけど。」
「表向きはだろ、実際のとこバレバレだけど。あと食い過ぎ。」
「おうち帰るまでもたへんもん。」
「もうよせって、国見。何だって美沙、さん相手だとすぐ突っかかるんだ。」
美沙が国見、金田一とばかり話していると、京谷がちっと舌打ちをする。
「おいどうした、ヤキモチか。」
矢巾がそんな同級生をからかった。
「あ。」
京谷は矢巾を睨むが、日頃美沙を見かけては飴をやったりするのだから言われても仕方ない、かもしれない。
「ぶっ飛ばすぞ。」
「よせよ、カメラで撮られてネットにアップされたらどーすんだよ。俺の女子株が下がるだろ。」
「そっちじゃないだろ、矢巾。京谷もマジで怒らないで。そもそもこの事態が誰かにネットにアップされそうで怖い。」
やんわりと注意するのは渡、主将はあれだし同級生はこれだし、そのうちストレスで闇落ちしないかが心配される。
「けど意外だなぁ、」
ここで口を開いたのは花巻だった。
「ままコがあの兄貴以外で出掛けようとするなんて。」
言う花巻にだなぁ、と松川も同意する。
「及川の時はわざわざ逃げられないように外堀り埋めてから誘ったって聞いたけど。」
「ちょっとまっつん、どういう意味。」
「別に、粘着質とか偏執的とかヤバいとか思ってない。」
「思ってんじゃん言ってんじゃんっ。」
わぁわぁ抗議する及川、プルプルと怒りで震えている岩泉、なるほどこれかと苦笑するしかない茂庭、一方で美沙はしれっとこう抜かした。
「茂庭さんは兄さんと同じ匂いする人やから大丈夫かと。」
一瞬、青葉城西の面々は沈黙した。
おまけにほぼ全員茂庭に注目したものだから茂庭はまた顔を赤くして動揺する。