第51章 【Sorry for Dali その4】
「お2人さんさ、」
また及川に声をかけられて美沙も茂庭も身構えた。
しかし及川は先程とは打って変わって落ち着いている。
無駄に格好つけているとも言う。
「この後予定あるのかな。ないんなら、ここの近くに植物園みたいな公園あるから行ってみなよ。んで、3時に広場の所に行ってみて。いいものが見れるよ。」
美沙と茂庭は目を丸くし思わず2人で顔を見合わせる。
「ええと、」
おずおずと美沙は呟き、
「おおきに。」
「あ、ありがとうな、及川。」
戸惑いまくった様子で茂庭も続いた。
「いやいやぁ、お礼には及ばないよ。」
ニッコリ笑う及川は大抵の女子なら見惚れる所だろうが、縁下美沙と茂庭要の場合はキョトンとした顔をするのみである。
「ったく、クソ川が。」
ぼしょりと岩泉が呟く。
「悪いな、うちのボゲが引っ掻き回して。」
「うちも後輩には手を焼いたけど、そっちはそっちで大変だな。」
「全くだ。そこの烏野6番の妹が絡むと特にな。」
「えろうすんません。(本当にすみません)」
「お前が謝ることじゃねぇ。」
そんな流れを経て改めて礼を言い、美沙と茂庭はその場を去った。
「どういった風の吹き回しだ、」
会計をしている美沙達まで聞こえない程度に岩泉が相方に尋ねる。
「あんだけ茂庭にずるいずるい抜かしといて。」
「別に。」
及川は目を伏せて答える。
「俺が一緒じゃないのは何かくやしーけどさ、美沙ちゃんには楽しんでほしいから。」
岩泉はフンと呟き、次の瞬間には相方の背中をバーンッと叩くのだった。
次章へ続く