第49章 【Sorry for Dali その2】
一方こちらは烏野と別れて帰宅途中の伊達工勢である。
「茂庭よぉ」
鎌先がニヤニヤしている。
「デート楽しみだなぁ。」
笹谷も一緒になってニヤニヤしており、茂庭は飛び上がらんばかりに反応する。
「いやいやいやっ、デートじゃないからっ。」
慌てふためくその顔は赤い。
「単に縁下君から許可貰って妹さんの付き添いをするだけだってっ。」
手をバタバタ振ってまで必死に主張する茂庭だが、笹谷がでもよ、とやはりニヤニヤしながら言う。
「一応女子と2人で出かけるわけだろ。」
「一応って、それ縁下君が聞いたら怒るぞ。」
「んで飯も一緒に食うんだろ。」
「そりゃあ、見終わったら多分昼飯の時間にかかるだろうし。」
「立派なデートじゃねぇか。」
「もう、ささやんまでやめろってっ。」
「心配すんなって、茂庭っ。」
とうとう鎌先にバーンと背を叩かれて茂庭はブフォッとむせた。
「それこそ尾行して邪魔したりはしねぇからよっ、安心しろ。」
「当たり前だろされてたまるかっ。」
茂庭は突っ込むが鎌先はガッハッハと笑っていて取り合わない。
「ったく、2人して勘弁してくれよな。」
やれやれと茂庭はため息をつき、鎌先と笹谷は悪い悪いと笑いながら言う。
とはいうものの、とこの時に茂庭は思っていたという。
せっかく美沙さんが誘ってくれたし、日曜が楽しみだなぁ。
そんなこんなで、日曜日当日がやってきた。
「ほないってきます。」
玄関先で美沙は義母に言う。
例によってガジェットケースは外出仕様、服装は小奇麗にまとまっている。
義母は微笑んで気をつけて行ってくるように言う。
美沙は頷いて、傘立てから日傘を手にとり外へと出るのだった。
ありがたいかな、この日はよく晴れていた。
日傘を差して美沙はてくてくと茂庭と約束した待ち合わせ場所へと向かう。
家を出るまでは感じていなかったが、いざこうして外に出ると急に緊張してきた。
義兄とよく似た雰囲気、少ないながらも会う度によくしてくれるし慣れている相手とは言え、敢えて2人で出かけるとなると何か違うものを感じる。
途中で黙ってもて気まずくなったらどないしょう。
良くも悪くもあまり深く考えていないと義兄に指摘される半分ボケでも其のくらいのことは考えるのだった。