第49章 【Sorry for Dali その2】
「怒らしたらめっちゃ怖い。」
「なるほど。」
少しばかり見つめ合って謎の結束を得た2人、しかし好き勝手言う義妹と同意してしまう後輩に力が黙っているはずもない。
「美沙、どういうことかな。」
「わ、私は単に普段怒らん人が怒るとめっちゃ怖いという一般的な話をしただけのことであって」
早口で言う義妹を一瞥した後、力は後輩を見やる。
「日向も同意しない。」
「すっ、スミマセンッ。」
「美沙さん、」
谷地が苦笑している。
「相変わらず一番怖いのはお兄さんなんだね。」
「日向は通常運転として、何でままコさんはちょいちょい迂闊なんだか。」
「そうだね、ツッキー。黙ってられる時は黙ってられるのにね。」
「てかままコも人の事言えねぇだろ。」
「影山は前に標準語で怒った美沙さん見て固まってたもんね。」
「うっせ山口、固まってねぇっ。」
「何でそんな見え透いた嘘つく訳。正直に言いなよ、標準語のガチギレままコさんは怖いんですって。」
「私が何やて、月島。」
「地獄耳。」
「言うたな。」
「美沙、やめな。」
月島に突撃しかねない義妹を力が素早く止めに入る。
「何にせよこれで日曜のは決まりで良かった。」
「そうや、兄さん。間違(まちご)うてもついてきたらあかんからね。」
「する訳ないだろっ。」
力は思わず叫ぶが木下と成田が何か言いたげに自分を見ている事に気がつく。
「何だよ、お前ら。」
力はジロリと2人を見るが、当の見られた方は苦笑していた。
「いやそのー」
木下が口を開く。
「成田の言うとおり実績が色々あるし疑われても仕方ないかなって。」
「文化祭で妹が心配だからってわざわざ見に行った兄貴だしな。」
「成田、お前もか。てか最近俺の評価が無茶苦茶過ぎないか。」
「兄さん、ここは諦めなあかんとこやよ。」
ブツブツ言う義兄の背中を美沙がぺちぺちと叩く。
しかし成田は美沙に向き直り、笑顔でこう言い放った。
「美沙さんも兄貴のこと言えないよ、さりげにブラコン凄いだろ。」
柔らかい癖にえぐってくる内容、一瞬の沈黙の後
「あんまりやああああああっ。」
美沙の叫びが周囲にこだました。