第48章 【Sorry for Dali その1】
そんななかなかの事情を背景に、今日も美沙は男子排球部の連中に混じっている。
「兄さん、」
歩きながら美沙は隣にいる義兄に尋ねた。
「今週の日曜て部活ある。」
「普通にあるよ。」
さらっと答える義兄に美沙はやっぱりかとしょぼんとする。
「急に何で。」
義妹の様子にすぐ気づいて聞き返す力に美沙は実は、と切り出した。
「パソコン部の先輩に美術館のチケットもろて」
「へぇ、良かったな。」
「4人まで行けるって話やったから兄さんはどうかなって思(おも)たんやけど、やっぱりあかんかったかぁ。」
「ごめんよ。」
「いやしゃあないのはわかっとうから。」
美沙は言ってうーんと唸る。
「どないしょうかなぁ、期限は今週までやし展示内容めっちゃ見たいのばっかしやし。」
「いっそのこと及川さんと行ったらいいじゃん。」
馬鹿にしたように言うのは常日頃から美沙とぶつかり、先輩である力の義妹愛だけには呆れている月島その人だ。
「何でやねんっ。」
ブルルッと身を震わせて美沙は月島にノリツッコミを入れる。
「いーじゃん、縁下さんの話だとアンタいっぺん及川さんに貸し出されてデートに行ったんデショ。2度目位どってことないんじゃない。」
「あんたなぁ、及川さんが私見る度何しよるかわかっとって言うとるんか。」
「そりゃ僕がいる時に及川さんがセクハラ行為を働いたら困るけどね、アンタが五月蝿いから。いないとこなら関係ないし。」
「ツッキー、縁下さんがいる前でそれまずいってっ。」
月島の友人である山口忠が慌てるが月島はおかまいなしだ。
「ままコさんファンの中じゃあの人が一等熱心なんだし、ファンサービスの一環だと思っとけば。」
「月島、その辺にしといてもらえるかい。」
美沙が言い返しそうでまずいと思ったらしき力が口を開き、月島は言い足りないといった顔をするも大人しく引っ込んだ。