第47章 【王者の命】その7
「俺らとしては美沙さんの事になると縁下が普段はしない暴走をする方が問題だから。」
成田がフォローするように言って一瞬妙な感じになりかけた空気は何とか戻った。
「結局俺かよ。」
力はムスッとするが、菅原がまぁまぁと話に参加する。
「で、兄妹揃って結局のとこウシワカと何の話してたんだ。」
「牛島さんがご丁寧にお礼言いに来はりました。」
「へえええええ、やるじゃんっ。兄貴としても名誉じゃね。」
「名誉は大袈裟な気もしますけど、美沙が頑張ったのは間違いないと思います。」
頷く力の横では美沙が密かに顔を赤くしていた。話をしていた力は気がついていなかったが、前の席の木下はニヤニヤしていて成田にこづかれている。
「だよなぁ。でも見てた感じだとそれだけじゃなさそげだったけど。」
菅原に言われて美沙がああいや、と歯切れ悪く言った。
「その、お礼をしたいってお申し出がありまして。」
「ますますすごい話だなぁ。」
東峰も話に参加し、んで、と田中も口を開く。
「お前なんつったんだよ、縁下妹。」
「私は最初別にお礼はいらんって言うたんですけど、ウシワ、いや牛島さんが働きに報いる義務があるって言わはって。」
「顔のまんまで難しい事言う野郎だなっ。」
西谷が笑って言うが彼の場合は笑っていられないと思われる。
「でも私色々持ってるから特にほしいもんなくて」
「結局食べ物って言ったんだよな。」
「兄さんっ。」
力にボソリと補足されて美沙は座席で飛び上がり、排球部の連中はほぼ全員が吹き出した。
吹き出していないのは月島と影山である。
「食べ物、食べ物て。」
山口は肩が震えまくっている。
「寒河江達が聞いたらひっくり返りそう。」
日向も言いながらプククと笑っている。
「で、でも美沙さんらしいかも。」
谷地もこればかりは震え上がるより前に笑いの方が先だったらしい。
「ままコって実は突っ込みじゃなくてボケじゃねぇのか。」
「だから半分ボケってんデショ、何を今更。」
ああ、と月島を睨む影山、ここで対立出来るあたりがこいつららしいかもしれない。