第47章 【王者の命】その7
「あの、不思議に思われたのはわかりますが、何か。」
なまじ鷲匠が咳き込んだ時に美沙が孫よろしく背中をさすった件があった為に恐る恐る尋ねる武田、一方鷲匠はズバリと言った。
「べったりが過ぎる。」
言われた瞬間、武田と烏養は同時にビクリとする。
一方鷲匠はそんな若い衆の反応に気づいているのか居ないのか、特に変化がない。
「鷲匠先生、いくらなんでも踏み込み過ぎでは。」
流石に黙っていられなくなったらしい斉藤が慌てて口を挟むが鷲匠は聞く様子がなく、武田と烏養は引きつった笑みを浮かべている。
当然だ、心当たりがなくもないのだから。
「まぁ、最終決めんのは本人らだろうけどな。」
この時、武田と烏養は伊達に年をとってない年長者は恐ろしい事を痛感したという。
そんなこんなで木下と成田が縁下兄妹と日向を回収し、烏野高校男子排球部―1人パソコン部含む―を乗せたバスは白鳥沢学園高校の敷地を出る。
「何かめっちゃ手ぇ振られてるぞ。」
窓の方を見て成田がぼそっと呟く。
「しかも美沙さんの方に。あれ天童さんだよな。」
成田は座席の後ろを振り返った。視線の先には縁下兄妹、美沙の方は恥ずかしそうに縮こまっている。
「お前ら兄妹また何したの。」
「俺は何もしてない。」
「嘘や、兄さんがいらんこと言うから。」
「俺は必要事項の申し送りをしただけだよ。」
「いや寧ろ不必要事項やった。」
「何だって。」
またにっこり笑って義妹に圧をかけようとする力、成田の隣に座っていた木下が慌てたように何だかよくわかんねぇけど、と口を挟む。
「また美沙さんとウシワカでボケの応酬だったのか。」
「木下先輩まで何ちゅうことを。」
「寧ろ木下さんだからデショ。」
離れた席から月島がわざわざ突っ込んできた。よほど美沙が関わると物申さずにはいられないらしい。
美沙はぼそっと出た月島語、と本人には聞こえないように呟き、力にこら、と突っ込まれる。
「僕ら1年も大概だけどアンタが何か引き起こした時一番割食ってんの木下さんと成田さんじゃん。」
「それはその、お2人ともいつもすみません。」
「や、俺ら別に」
木下は言いながら月島の方を振り返っておいっ、と呟くも月島は素知らぬ顔である。