第47章 【王者の命】その7
縁下兄妹が―というより主に美沙が―白鳥沢勢とわいわいやっている一方、先にバスに乗った烏野の連中は窓から様子を伺っていた。
「縁下兄妹はまた何やってるんだ。」
澤村が呆れたように呟く。
「まーた美沙ちゃんが白鳥沢にとっ捕まってら。」
菅原は面白がっている。
「さっき美沙ちゃん、あそこの1年にナンパされかかってたとこじゃなかったっけ。」
東峰はうわぁとなっている。
「ウシワカと何話してるのかしら。」
清水は首を傾げて呟き、谷地がうーん、と言う。
「美沙さんと牛島さんが話すといつも独特な感じですからどうなんでしょう。」
「独特も何もままコさんは半分ボケで、ウシワカはストレート系天然ボケ、ボケonボケでとりとめがないってだけデショ。」
月島は身も蓋もなく、それよりと山口が呟く。
「日向もまだ乗ってなくない。影山見なかった。」
「知らねぇよ、俺はあいつの親じゃねぇ。」
「どっちかってぇと喧嘩しがちな親戚だな。」
ウシシシと田中が笑い、
「だなっ。」
西谷も乗っかるため影山は眉間の皺を深くする。
「あのー」
ここで木下が片手を上げて言った。
「俺と成田で縁下兄妹回収してきまーす。」
ついでにと成田が言う。
「日向も白鳥沢の1年達と話してるみたいなんで回収します。」
「ああスマン、頼んだぞ。」
木下と成田は、はいと返事をして同期とその義妹と後輩の回収へ向かった。
生徒はそういう感じで騒がしくしていたが、指導者側でも意外な事になっていた。
「先生よ、」
鷲匠が静かに武田に話しかける。烏養と斉藤は黙って見守っている。
「何でしょう。」
聞き返す武田に鷲匠は淡々と言う。
「あんたんとこの6番と妹、ありゃ訳ありか。」
「お気づきでしたか。」
武田は苦笑する。
「顔も言葉も全然ちげぇ、そのくせ6番の小僧は妹だと言い切る。何もないってこたぁねぇだろ。」
ごもっともです、と武田は呟いてから鷲匠の問いに答えた。
「美沙さんと縁下君は義理の兄妹です。美沙さんはお祖母さんに育てられていたんですが、そのお祖母さんも亡くなって。そこへ縁下君の所に引き取られて烏野へ来たそうです。」
「どおりで。」
鷲匠はふぅと息をつく。