第45章 【王者の命】その5
ぎこちなく挨拶をすると寒河江と赤倉も同様に自己紹介を返す。
「白鳥沢の寒河江です。」
「赤倉です、1年です、よろしく。」
「3人とも固っ。別に敬語じゃなくてもいいじゃん。」
「無茶言いな(言わないで)日向、私がこういうん苦手なん知らん訳やないやろ。」
「てか何か丁寧に挨拶されたから。」
「な。」
美沙と寒河江と赤倉は思わず顔を見合わせて、しかしすぐにパッとお互い視線を外す。
「ちゅうか日向てつくづく顔広いなぁ、白鳥沢で友達おったんや。」
「合宿の時に会ったんだ。」
聞いた瞬間、美沙はピンと来た。
「合宿てアンタがお声かかってへんのにトチ狂って乱入して皆がえらい目におうたあれ。」
日向はうぐっと唸る。
関西弁のおかげでやや丸くなっているものの美沙にしては珍しく且つ厳しい指摘のせいか。
「美沙、知ってたの。」
「兄さんとやっちゃんから聞いた。月島がブツブツ言うてたんも見かけたし、流石にちょっとて思(おも)たよ。もう散々怒られたやろから何も言わんかったけど。」
「うう、美沙がいつもよか厳しい。」
「怒られてやんの。」
「寒河江、笑うなーっ。」
「バレー部じゃない私が言うのも何だけど、本当すみません。」
「や、大丈夫、大丈夫、です。」
赤倉が顔を赤くして言った所で4人はシィンとなった。
もともと人見知りの美沙、日向に強引に連れてこられた為いざとなると何を言ったものがわからなくなった寒河江に赤倉、状況があまりわかっていない日向、何とも妙な図である。
「あのさ」
やがて口を開いたのは日向だった。
「2人とも、美沙に聞きたい事あるんじゃなかったの。」
いきなりぶっこまれた寒河江と赤倉は飛び上がる。
「聞きたい事、って何でしょう。」
美沙は標準語で言って首を傾げた。寒河江と赤倉はいや、その、と逡巡した様子を見せていたが
「えと、」
とうとう寒河江が言った。
「うちの牛島さん、とか五色とかレギュラーの皆とその、仲良さそうだったから、何でかなぁって。」
「ていうか、牛島さんはたいてるのが凄すぎてびっくりしちゃって。」