第45章 【王者の命】その5
今回については依頼があったから来ざるを得なかった訳だし、烏養まで日向と一緒くたにしてくるのはあんまりだとは思うものの迂闊に反論はできない。
以前に烏養引率のもと、義兄及び排球部の連中とバレーボール観戦に行った先で伊達工、青城、白鳥沢と立て続けに騒ぎが起きたのもまだ記憶に新しいからだ。
美沙はぎこちなく笑ってやり過ごし、パソコンの方へ目をやる。液晶画面に表示された書き込みの進捗状況、今の所エラーで止まっている様子はない。
「ああ、そうだ。」
妙な空気を察したか武田が言った。
「言うまでもないとは思いますが美沙さん、帰りはお兄さんと一緒にこちらのバスに乗ってください。一旦学校まで来てもらうことにはなりますが。」
「わかりました。ほなその後は私は先帰ったらいいですか。」
「そうですね。ただ、その際は出来る限り親御さんに迎えに来てもらってください。」
「最近とみに物騒だからな。」
「烏養君の言うのが一番の理由ですが、縁下君が1人で帰すのは嫌だと言い出す可能性もありますから。」
「ちょ、ちょお待ってくださいっ。先生、うちの兄を一体何やと。」
「確かにな。」
「コーチまでっ、あんまりやないですかっ。」
「こんの半分ボケ、どうせホントはわかってんだろーが。お前が絡んだ時限定で暴走する兄貴にこっちが何べん振り回されたと思ってる。」
ゴリ押しされてまうコーチもどないなんですかと美沙は叫びたいが実際義兄の力の暴走もわかっている為これまた何とも言いかねた。辛い。
「すみません、美沙さんも大変なのはわかっているんですが。」
笑いながらも申し訳なさそうに言う武田に美沙がふぅと息を吐いたところで背後から美沙ーと声がした。
「日向。」
と、知らない白鳥沢の男子が2人いる。
「お疲れさんやったね。」
「おう、サンキュなっ。あ、美沙。白鳥沢の寒河江と赤倉。」
「ええと。」
急に紹介されると人見知りとしては困るし、実際向こうも戸惑っている。
「初めまして、烏野高校1年の縁下美沙です。えと、本当はパソコン部なんですけど今日は急に撮影って事で来ました。あっちの方にいる縁下力は兄です。」