第40章 【トラブルドゥトラベリング】その6
その後力は義妹が荷を解くのを手伝ってやり、一緒に夕飯を食べた後ベッドの上で一息ついていた。
なおここは義妹の部屋である。が、この兄妹の場合いつものことになっているので良いか悪いかはとりあえず置いておこう。
「あー、疲れた。」
ころんと仰向けに寝転がって義妹が言う。片手には愛用のスマホ、写真ビューアのアプリを呼び出している。
「そりゃあ、な。」
隣に転がりどさくさ紛れに抱きしめながら力は苦笑する。勿論相手が義兄なので抱っこされても美沙は何も言わない。
「あんだけまさかの事が起きりゃ。」
「一番肝冷えたんは侑さんが勝手に兄さんと喋ったんと及川さんに誤爆して兄さんが電話してきた事やけど。」
「どっちも俺が電話した件かよ。」
「せやかて兄さん、」
義妹はぷうと膨れる。
「大変やったんやで日向達は命の心配しだすし、稲荷崎の人らはドン引きしとるし。」
「何だってそんなに怖がられなきゃなんないんだ。」
「あんだけ侑さんとやりあっといてようまぁいけしゃあしゃあと。」
「何か言ったか。」
「な、なんもないです。」
体をピクリとさせる義妹に力はクスリと笑った。気づいた義妹がもう知らんとプイッとするが勿論力は強引にその顔の向きを戻す。
「ところでそれ写真。」
義妹が再びスマホ操作を始めたのを見て力が尋ねると義妹はうんと頷いた。
「何か思うよりいっぱい撮った。」
「へぇ良かったな。」
「これ、やっちゃんと2人で撮ってもろた着物のやつ。」
「うん、やっぱり綺麗だよ。」
「ほんまに。」
「俺がお前のことで嘘ついても仕方ないだろ。」
「ほな信じる。」
「相変わらずツンデレだな。」
「ちゃうもん。」
「まだ言うか。あと浴衣も嫌いなのによく着れたのは驚きだけど。」
「稲荷崎の人らまで一緒になって説得された。」
「何だよそのなかなかの事態。」
「あとこれ映画村のたてもん(建物)。」
「このセット凄いな。」
「兄さんおったらカメラ回しまくりやね。」
「そうかもな。」
「それとここ。」
「銀閣寺か。」
「日向と影山が銀色ちゃうって。」
「ハハ、あいつららしいな。」
「あとここも良かった。」
「哲学の道かな。」
「うん。結構人おったけど景色が好き。」
「そっか。」