第40章 【トラブルドゥトラベリング】その6
他愛のない会話をしながらスマホの画像をめくっていく美沙、しかし
「ちょい待ち。」
義妹が次の写真へ行きかけて慌てたように戻す操作をしたのもその一瞬の間に見えたものも力は見逃さなかった。
「今の何。」
勘違いでなければ、というより確信があったのだが力としては看過できない構図の写真である。
「何もない。関係ない写真やった。」
努めてサラリと言う義妹だがまだ少々目が泳いでいる。ごまかされる力ではない。
「見せて。」
「嫌。」
「見せて。」
「嫌や。」
義妹もなかなかしぶとい。とうとう力は強引な手に出た。
「見せなさい。」
「嫌やーっ。」
笑顔で繰り出される圧に耐えかねたのか美沙は逃げようとしたが勿論力は逃さない。
素早くベッドの上に押さえつけて片手に握られたスマホを没収、再度ロックがかかる前にと素早く画面をタップする。
勝ったと力は思った。
知恵がついたのか耐性がついたのかそれとも両方か、義妹は最近即陥落とは行ってくれないのである。恐らく木下や成田あたりは成長だと言うのだろうけれど。
「ちょお、兄さんっ。」
抗議の声を上げる義妹を抱えてベッドの上に座り直した力はスマホを勝手に操作する。
義妹がめくりかけて戻した写真、やはりと思うと同時に力は顔から表情がなくなるのを自分で感じた。
「美沙。」
なるべく冷静に言ったつもりだったが義妹はうっと唸る。
「これ、何。」
よりにもよって愛する義妹が宮兄弟に挟まれしかも両方から抱っこされているあれだった。
力は笑顔を作ったつもりであるが
「ふぎゃああああああああっ。」
義妹は動揺して叫びジタバタと暴れだす。
「こら暴れない。」
「堪忍して兄さん、私ちゃんと兄さん以外は抱っこ禁止って言うたんやからあああああ。」
「わかったから静かにしな。」
自分が圧力をかけておいて勝手な話であるが力は言って義妹を抱き直し、頭をなでなでしてやる。義妹はぐすんと半泣き状態、完全に甘えたモードに入っているらしい。
「まったく。」
力はため息をついた。