第40章 【トラブルドゥトラベリング】その6

「何。」
「侑君と治君が」

小作が言い出して銀島が続きを口にし、そのまま2人は交互に話した。

「あの昼間会(お)うた烏野のネットアイドルのええと、」
「ままコいう奴見つけたらしくて」
「2人してストーキングしてったらしいっ。」
「ハアッ。」

若干キレ気味になった角名を責めることは出来ない。

「何、烏野もここに泊まってたの。超運悪いじゃん。」

事を把握できていない同室の男子達にはお構い無しで角名はブツブツ呟いた。

「んで、聞きまわって俺らどこの部屋か突き止めたからこれからそっち行こと思(おも)て。」

銀島が更に言う。

「角名もと思てここ来た。」
「えー何で。」
「せやけど」

やる気が起きない角名に対しここで小作が止めを刺すかのように言った。

「ここであいつら放置したって北さんにバレたら俺等確実に死ぬで。」

角名はブルルッと身を震わせた。あの主将にバレる事自体が有り得そうな気しかしない。

「わかった。ちょっと俺行ってくる。」

キョトンとするしかない同室の男子に声をかけ、面倒臭さ全開で角名はノソリと部屋を出るのだった。


そうこうしている間も宮兄弟はまだ粘っている。

「えーやん仁花ちゃんやっけ、呼んでぇな。」
「駄目駄目駄目ですぅぅぅぅ。」
「ほなもういっそのことこんまま部屋入るで。」
「こらそこのイケメソその２、さらっと問題発言すなーっ。」
「褒められとるんか怒られとるんかようわからんな。」
「怒っとんのっ。」
「そない怖い顔したら可愛い顔が台無しやでー。」
「食えへんイケメソその1もやかましっ。」
「ままコちゃんは激しいツンデレやな。」
「このっ。」

美沙はとうとう枕をひっつかみ、同室の女子達が縁下さん落ち着いてと抑えにかかる始末だ。
谷地は半べそ、もうもたないと思われた時だった。

「ええええええええっ。」

聞き慣れた男子にしては若干高い声が響いた。

「宮さんっ、何してんスかっ。」

次に聞こえた低い声、谷地があっと声を上げる。

「日向、影山君っ。」

それが聞こえた瞬間美沙は掴んでいた枕を離した。

「あー、やっと来てくれた。」

言っている間に事態は進行する。