第37章 【トラブルドゥトラベリング】その3
その間にも日向があちこちを見てはおおーとかすげーとかわーなどと叫んでは山口達を引っ張って話に引きずり込んでいる。
「え、何あの建物、ちょーリアルっ。」
「日向あんたさっきからやかましいでって、えっ何これめっちゃ写真撮りたい風景っ。撮ってええんやろか、あでも撮影はやっちゃんの方が絶対上手やんなっ。」
「ええっ、私っ。」
縁下美沙までもが若干日向に引きずられてテンションが高いと来ていた。
「ったく、谷地さんはともかくとしてよくまぁそんなにはしゃげるよね主に日向、次点でままコさん。」
呆れる月島に対し宮侑がハハハと笑う。
「新鮮な反応やなぁ。」
「おっさんか。」
相方の治に突っ込まれるも侑は折れない。
「ままコちゃんはいっつもあんなんか。」
「一時的なもんですよ、出不精が過保護のお兄さんから解放されてしかも見慣れないとこにきたんで。」
「どシスコンなんはわかったけどどんな状況やねん。」
治の問いに月島はああと淡々と語る。
「縁下さんなら迷子防止とか言ってままコさんの手を繋いだまま離さないでしょうね。それと必要以上に世話を焼くんじゃないですか、手はちゃんと洗えとか危ないからこっちに来いとかお手洗いは絶対他の女子と一緒とか。あと知らない男子ががままコさんに話しかけようもんなら間違いなく威圧するでしょうしどっかの誰かさんがされたみたいにままコさんを無理矢理引っ張り出そうもんなら普通相手は命が危ないですよ。もっともその前にままコさんが嫌がりますが。」
「クソサム、何やその目。」
「お前完全アウトやん。ままコちゃんに嫌われたんちゃうか。」
「ええっ、嘘やろっ。」
「そうですねぇ、何せままコさんは慣れてる奴とお兄さん以外に触られるの嫌いですしねぇ。」
「こんの眼鏡ホンマ腹立つっ。」
「性悪の同族嫌悪やないか。」
「まさか、僕なんか到底かないませんって。」
「腹立つーっ。ちゅうかわかったでっ。」
「今度はなんや。」
「つまり俺はままコちゃんに慣れてもろたらええんやな。」
「お前の精神年齢下がるんは試合の時だけか思(おも)てたんやけど。」
「うっさいねん。」
「青城の及川さんみたいに叩かれてもいいなら引きずり出すなり抱っこなりお好きにどうぞ。及川さんはそれでも懲りてませんが。」
この時宮城では及川もまた思い切りくしゃみをしていたがそれはまた別の話である。