第37章 【トラブルドゥトラベリング】その3
「ツムも懲りへん可能性あり。」
「ままコちゃーん、こっち来(き)ぃひん。」
「来ぃひん。」
「ほな俺が行くー。」
「行かんでええわド阿呆さっきから恥ずいんじゃっ。」
「人のこと暴言なんたら言う癖に何かにつけて罵倒すんなっ。」
「突っ込みどころしかあらへん癖に無茶抜かすなっ。」
「お仲間をどうにかしていただけませんか。」
とうとう軽く喧嘩を始めた双子を見て鬱陶しそうに言う月島、しかし
「ごめん先輩がいる時なら何とかなるけど。」
「双子に突っ込みだすとキリあらへんからなぁ。」
「そうそう。」
角名も銀島も小作もなるべく触りたくないらしい。
月島はこれだからままコさんといると、とげんなりするのであった。
そんなこんなで一行は敷地内を歩く。そのうち扮装が出来る場所を通りかかった。
色とりどりの着物に早速着付けをしてもらって写真を撮っている女性陣、谷地がはわわわとなっている。
「わぁ素敵ぃ、ちょっと着てみたいなぁ。ね、美沙さん。」
谷地は行って美沙の方を振り返るが
「あれ。」
隣りにいたはずの縁下美沙の姿がない。谷地がキョトンとしていると月島があっちと気だるそうに指差す。
見れば美沙は高速でグループの後ろの方に退避していた。
「美沙さん逃げ過ぎっ。」
ガーンッとなる谷地に対し、事を知らない稲荷崎の連中が面白がる。
「何なん、ままコちゃんどないしてん。」
早速反応する宮侑に月島が面倒臭そうに説明した。
「ままコさんは近年稀に見る浴衣嫌いアンド着物嫌いでして。」
「は。」
侑が首をかしげるのも無理はあるまい。
「普通女子てキャッキャ言いながら着物とか着たがんのに。」
これまた疑問形で言うのは宮治である。
「え、もしかしてあいつ男の娘とか。」
「銀、それだと逆に着たがると思う。それに学校が許さないでしょ。」
「とにかく珍しなー、男でももうちょい洒落っ気あるで。」
銀島、角名、小作にまで言われようが縁下美沙は動かない。