第36章 【トラブルドゥトラベリング】その2
「わっ。」
美沙は飛び上がった。愛用のスマホが振動したのだ。
慌ててガジェットケースから取り出して画面を見てみるとメッセージアプリの無料通話、かかってきたのは勿論
「ああああ、何でこんな時に兄さんからっ。」
聞こえていた烏野の1年生陣も戦慄していた。義妹にかけてきた縁下力がこの状況を知ったら多分自分達は無事で済まないといったところか。
美沙もタイミング悪すぎやと焦ってはいたが出なかったら出なかったでややこしくなるのはよく知っている。
「もしもし。」
大人しくボタンをタップして通話を始めた。
「美沙、大丈夫か。」
聞き慣れた義兄の声に安心するような不安なような複雑な気持ちだ。
「あ、ええと」
「お前あれだけ言ったのに朝の定時連絡忘れただろ。」
「せやかて起きてバタバタしとったもん。」
「まぁ昨日の晩はちゃんとよこしたからよしとするか。まさか1人でウロウロしてないだろうな。」
「やっちゃんと日向と影山と月島と山口もおるよ。」
「そっか。じゃあとりあえず今は無事って事か。」
「えーとその」
口ごもったのがまずかった。受話口の向こうから力が疑っているのがありありと伝わる。
しかもここで予想外な上にややこしいことが起きた。
「あーっ。」
美沙は思わず叫んだ。何と宮侑が美沙のスマホを取り上げたのだ。続けざまのとんでも事態に谷地が泡食って倒れそうな勢い、山口は慌ててそんな谷地を支え日向はえええええと叫び月島は無表情でキレている。影山に至ってはついていけないのか呆然とするばかりだ。
美沙はスマホを取り返すべくぴょんぴょんするが片手で侑に押さえられてしまってうまくいかない。
「もしもしー、ままコちゃんのおにーちゃん。」
当の宮侑は疑問形で挨拶しつつ兄弟にキショいと呟かれ、他の仲間にもドン引きされている中呑気に縁下力と勝手に通話を始めた。