第6章 【初めてのバレンタイン】
言って清水は谷地と一緒に美沙からの分も配りだした。ご丁寧な事に包みにはいちいち名前を書いた付箋が貼ってある。美沙から見て上級生のは田中先輩、澤村先輩といった具合、同級生のは敬称なしで日向、影山といった具合である。
「あ、清水先輩、私達のもありますよ。」
「嬉しい。」
そして肝心の義兄である力の分は堂々と兄さんと書いてあったので木下、成田、菅原がブブブと吹いた。
「もう、美沙の奴。」
力がため息をつく一方、西谷や日向は早速貰った袋を開けている。
「あ、飴だっ。」
日向が嬉しそうに言った。
「ここでまさかチョコ以外が来るとは、縁下妹恐るべし。」
「へえ、面白いな。」
珍しそうにする田中と成田に力は解説する。
「多分他からチョコばっか来るだろうからって配慮したんだと思う。」
「半分ボケの割には考えてますよね。」
月島が捻くれた言い方をしたが力は意図を汲んでありがとう、と返した。
「あれ、そういや美沙ちゃんからのこの袋。」
菅原がふと呟いた。
「もしかして自分で作った。」
言われて見てみれば貼り合わせて作ったらしき形、紙質は既成のラッピング用ではなく明らかにプリンタ用の奴だ。そしてプリントされている図柄に力は覚えがあった。おそらく先日の力への誕生日プレゼントにひっつけていたカードと同じく手持ちのデジタル素材集の柄を利用して色々組み合わせたのだろう。その事を話すと菅原は
「相変わらず器用な子だな。」
と笑った。
そんなこんなで思わぬ方からの差し入れもあり、男子排球部関係者の多くはホクホクとして帰路についた。1人力だけは少し物足りない顔をしていて木下に指摘されてこっそりとおちょくられていた。