第30章 【強引g his way】その1
「縁下、流石にいい加減にしろっつのっ。」
しかもとうとう田中まで乗り出していた。日頃力は田中に突っ込む役であるというのに突っ込まれていては世話はない。
「駄目だ、田中にまで言われてんのに効果なしって重篤すぎ。」
「木下どういう意味だコラッ。」
「一仁どうすんだ。」
「美沙さん絡みだと大地さんの言うこともたまに聞かないしもう実力行使かな。」
「ケリでも入れるとか。」
「じゃあ言い出しっぺで木下よろしく。」
「うおおいっ。」
「心配しなくてもちゃんとフォローするから。」
「そういう問題じゃねーって田中と西谷は菩薩顔やめろっ。」
そろそろ限界、2年生陣の間で木下が力にケリを入れる役をさせられそうになったところでだあああああもうっという声が爆発した。
「わかったよっ許可すりゃいーんだろ許可すりゃっ。」
なんということであろうか、烏養繋心は折れてしまった。
当然排球部の連中は大方が慌てふためく。
「烏養さんが折れたっ。」
木下が叫ぶ。
「ええええええええっ。」
成田も当然叫ぶ。
「マジすか。」
田中がポツリと呟いて固まる。
「良かったな力っ。」
西谷は呑気に力の背中をバスバス叩く。
「ちょ、マジか、烏養さんが折れるて。」
菅原がブフォッと吹き出すが笑い事ではないような気もする。
「やっちまったな。」
澤村は笑顔だがこめかみから汗が伝っている。
「これは兄貴の愛、なのかな。」
東峰も苦笑、コメントに困りまくっている。
「清水先輩、これはありなんでしょうか。」
「なしな気がするけど縁下は安心かも。」
マネージャー陣は静かに驚き困惑している。
「ここここコーチが折れた。」
「縁下さんやっちゃった。」
日向と山口はブルブル震えている。
「何でこうなる訳。」
月島がドン引きし、何もコメントをしない影山に目をやる。
「王様は無言で固まってるし。」
そんな風にチームメイト達がどえらい事になっている中で力は対照的に落ち着いて烏養に言った。
「ありがとうございます。じゃあすみませんがまたうちの美沙がお世話になるということで。」
「お、おう。」
後に烏養が語った所によるとこの会話の間彼が力から感じたのは相当な圧であり、ずっと冷や汗ダラダラだったという。