第30章 【強引g his way】その1
そうして力と烏養の無言の根比べという見えない上に謎の戦いが展開されていた。
主将の澤村大地、副主将菅原孝支、エースの東峰旭、マネージャーの清水潔子、力の2年仲間田中、西谷、木下は勿論1年の日向翔陽、正セッター影山飛雄、月島蛍、山口忠、そして美沙のクラスメイトでありマネージャーの谷地仁花も見つめている。
顧問の武田一鉄はこの時職員室に戻っていてそのまま手が離せなかった為この場にはいなかった。いたら流石の力も止まっただろう。
力の圧力、烏養の拒否、成田が力をしきりに引っ張っていい加減にしろよと言う一方で誰か手伝ってと助けを求める。木下が応じて縁下ーもうやめろってーと力の二の腕のあたりをペシペシとやるがこれまた効果がない。
「何で止めないんですか、澤村さん。」
文句を言う月島に主将はうーんと苦笑する。
「俺もまさかこの展開は予想してなかったからなぁ。」
「てか美沙ちゃん絡みだと大地の言うことも聞かないもんな、縁下。」
菅原がアッハッハと笑うが東峰が笑えないってと呟く。
「烏養さんめっちゃキレてるだろあれ。」
青ざめて震える東峰、いくら彼がコート外では弱気とは言えこれは責められまい。
「コスプレ喫茶の美沙ちゃんが可愛かったのはわかるけど縁下も大変ね。」
「知らない男子にも握手されちゃってましたから。でもこれはどうかと。」
おずおずと清水に言う谷地の近くでは山口がうわぁと言った顔、更に日向がごくりと息を呑む。
「や、山口、これどーなんの。」
「お、俺に聞かれたってわかんないよ日向。」
「よくわかんねぇけどままコ連れてきたらいいんじゃねぇか。」
縁下美沙を動画投稿用のハンドルネームで呼ぶ影山の発言に山口と日向は首を傾げた。
「何で。」
ポツリと疑問を呈する山口に影山は何でってと続ける。
「あいつがこれ見たら恥ずかしいって縁下さん止めるだろ。」
「おおーっ。影山にしてはナイスっ。」
「あんだと日向ボゲエッ。」
「この状況でそっちも喧嘩やめてってっ。てかそれ無理、パソコン部はとっくに終わってるし今日は美沙さんは縁下さんと帰らない日だし。」
「ああそっかぁ。」
「ぐ。」
その間も力と烏養はまだやっていた。