第30章 【強引g his way】その1
言われた西谷はキョトンとしており力は慌ててそんな西谷を引っ張る。これ以上訳のわからないことを言われたらとばっちりが来そうだ。
「すみません、あの俺は大丈夫なんで。」
苦笑しつつ謝ると烏養はおう、と不器用な返事をして話は終わったかと思われたが
「力、マジでいーのか。」
何と西谷が話を続けた。顔からして本気で疑問に思っているのは明らかだ。
「あいつ家に置いといたら1人で外ウロウロするぞ。」
「出不精だからその心配はない。」
「でもたまに出るだろ。」
「そりゃまあ買い物とか図書館に行ったりはするけど。」
「前にお前おっかけて青城まで来たし。」
「あれは俺が忘れ物したから。」
「1人で外行って他校に絡まれるかもだぞ。」
「確かにちっと顔を知られてるけど。」
「こないだ帰りに知らねえ他校に声かけられたってよ。文化祭のコスプレ喫茶に来てた奴らしい。」
「ちょっと待て俺そんな話聞いてない。」
ここで一連のやりとりを聞いていた2年仲間の木下久志と成田一仁が顔を見合わせる。
「まずいネタ来た。」
呟く木下に成田が頷く。
「行こう、美沙さんが声かけられたとか完全に縁下暴走案件。」
2人はすぐさま行動した。まだ話したりなさそうな西谷を木下が引っ張り、烏養の方へとって返しそうな力を成田が引っ張った。
「縁下、西谷の話聞いたらからって理由にはなんないから。」
言われながらも力は烏養の方を見て視線に気づいた烏養は絶対許さんからなと言わんばかりにブンブンと首を振る。
「ほら。」
成田が言っただろという雰囲気で言うも力は烏養から目を離さない。
しばしば眠そうに見えると無茶苦茶を言われる垂れ目気味の目、全体的に柔和な顔で若干哀れみを含んだ雰囲気を以って見つめる様は何気に圧力がある。
対する烏養はそっぽを向いて無言だった。今回こそ譲らねぇぞという構えである。
それでも力は烏養をじーっと見つめてどうしても駄目ですかという無言の念を送った。
成田がやめろってばとその両肩を掴んで引っ張るが動かない。