第23章 【パニック at the文化祭】前編
「ふぎゃっ、えっ、ちょおっ。」
動揺する美沙だが衣装係は聞いちゃいない。可愛い似合うちょっとメイクメイク、メイクも試そうと騒いでいる。
「ちょ、待って落ち着いてくれ私別に」
鞄を漁って化粧品まで取り出す衣装係を止める事が出来ず美沙は化粧まで試されたのであった。
メイクまで試した衣装係は満たされた為か顔がツヤツヤだった。これヤバイ縁下さん行けるよマジ似合うと力説する。
「そうかな。」
鏡を見せてもらっても美沙はいまいちピンと来ない。幼い時から外見で無茶苦茶言われた傷は深かった。それでも手間のかかる類の衣装を作ってくれてここまで褒めてもらったとなると無下には出来ないのもまた縁下美沙だ。
「あ、ありがと。」
動揺しつつも美沙は言った。
「当日もよろしくね。」
衣装係はうんうんと頷いた。
そしてその日の帰りである。美沙は男子排球部の面々と帰っていた。今日は義兄の力が部活終わるまで待って一緒に帰る日なのである。義兄の過保護は今更だ。
「いよいよ文化祭か。」
力の2年仲間である成田一仁が言う。
「準備でみんな遅いよな。」
実際普段なら練習が長めの運動部以外生徒が通らない時間帯だがこのところ烏野高校の生徒が多く帰路についているのが見られる。そだなーと言うのは同じく2年の木下久志だ。
「うちのクラスもダンボール集めまくって工作しまくり、俺もちょい手ぇいてぇ。」
「久志、これで冷やすかっ。」
「や、西谷、流石に口に入れるアイスで冷やすのは忍びねーわ。」
「そうかっ。」
「西谷は勿論だけど田中も大丈夫か、暴走して女子怒らせてないだろな。」
「待てゴルア縁下っ、どーゆー意味だっ。」
喚く田中龍之介に対しどーゆーもこーゆーもそのままだってのと縁下力は呟きふと隣を歩く義妹を見やった。
「そういや1-5は何やるんだ。」
聞かれた義妹はうぐと唸った為返答が遅れ、代わりに谷地が口を開く。
「あ、うちは4組と合同でやるんです。」
「へぇ。で、何を。」
再度聞く力に谷地も一瞬沈黙しそれがぁと苦笑した。すぐに力は何か都合の悪いことがあるなと察した。義妹の美沙が即答しない上にクラスメイトである谷地までも口籠るのだから間違いない。すぐに力は1-4である山口と月島に目をやった。