第23章 【パニック at the文化祭】前編
月島はハと息を吐きしかし次の瞬間には少し意地の悪い笑みを浮かべていた。
「縁下さんにもいい加減妹が表に出る時の耐性をつけてもらうべきデショ。」
そういう訳で企画は進行していく。会場に必要な装飾を製作したり必要な用品を手配したりしばしば進捗が確認されたりする中のとある日、縁下美沙は衣装合わせをしていた。
「えーと」
元々逸らしがちな視線を更に落としながら美沙は呟いた。
「私これ着るのか。」
標準語で言う美沙に衣装係の女生徒はうんうんと力強く頷く。どうやら力作らしい。
「いやでもこれその」
言って美沙は両足をすり合わせるような仕草をした。ものすごく落ち着かない。というのも見せられた衣装はロリータ系のフリフリだった。以前谷地と同じく男子排球部のマネージャーである清水からピンクロリータ系の服をもらい受けてしまった事があるがこれもまた同系統でおまけにスカート丈が大変ミニである。十中八九下着がはみ出すコースだろう。外見に対する劣等感が強い美沙にとってはたまったものではない。いややどないしょうこれ絶対私やのうてやっちゃんが着るべきもんやろ私がこんなん着たらSNSとかで絶対キモいとか何とか悪口書かれるやん決まっとうと頭の中がグルグルしている。
対する衣装係は譲らない、縁下さんは絶対これと主張した。とにかく着てと言い続ける。仕方なく美沙は一旦場所を移して試着するのだった。
何とか1人で試着して高速で戻ってきて衣装係に見せると係は目を丸くした。あーやっぱり似合わへんか、せやんな(そうだよな)と美沙は1人勝手に思う。嫌な予感はしていたがスカート丈はやはり短くドロワーズがはみ出していた。清水にもらったロリータ服もそうだったが何故に下着がはみ出す必要があるのか。隠したいことこの上ない。そんな風に美沙が思う中衣装係は何とキャーッと叫ぶ。ぎょっとした美沙が少し後ずさると衣装係は可愛いいいいいいいと声を上げた。