第23章 【パニック at the文化祭】前編
「えーとそれが」
「コスプレ喫茶ですよ。」
山口と月島の交替での回答に力は途端に顔から表情がなくなりそうになったがいや待てとここは何とか落ち着きを取り戻す。
「意外だな。」
「俺も思いました。」
「で、まさかうちの美沙がコスプレする訳じゃないよな。」
ところがここで山口までもが目をそらす。
「美沙。」
とうとう力は沈黙を守ったままだった義妹に振った。力は無意識に顔は笑っているが目が笑っていない状態、義妹は気づいているのか明らかに冷や汗をかいている。
「正直に言ってごらん。」
うーと唸ってから義妹の美沙はとうとう口を割った。力はしばらく黙って話を聞いていたが今度こそ顔から表情がなくなっている。気がついた谷地と山口が怯えているのも見えているが構っている場合ではない。
「よりにもよってお前がコスプレで接客って。」
力は呟いた。
「で、衣装は。」
重ねて聞くと義妹は冷や汗が止まらない様子で肩からかけているガジェットケースから愛用のスマホを取り出して操作する。後で力が聞いたところによると高揚しまくった衣装係が義妹に写真を転送してくれたらしい。ともあれビューアアプリで表示されたそれを見た力の顔へ更に影がかかった。
「何でその時止めてくれなかったんだ。」
ぐりんと顔の向きを変えて言ってくる力に山口と谷地がヒイイイイイと叫んだ。
「すみませんすみませんすみませんっ。」
「ほんっとすみません3回くらいマントルに潜ってお詫びしますうううううっ。」
「ちょちょ何言うとんの山口もやっちゃんも悪ないやんモチついてっ、ちょお兄さんっ。」
コメツキバッタの如く頭を下げまくる山口と谷地に慌てる美沙が騒ぎだす中で月島はいや無茶デショといった顔、言うまでもなく呆れている。とうとうしばらく黙って見守っていた成田がおいと口を挟んだ。
「縁下無茶言うなよ、だいたい接客はくじで決まったんだから。」
更に木下がそうそうと声を上げる。
「それに写真見たとこ着るのって前に清水先輩からもらったロリータ系じゃん。似合ってるし問題ないだろ。」
木下に似合っていると言ってもらえるとは思っていなかったのか聞こえていた美沙は密かに照れているが力はんな事は分かってると続けた。