第5章 【聖夜は26日】
「それどっちもアンタから言い出したんじゃないよね。縁下さんから言われなかったら絶対気づかなかったデショ。」
「そうかもしれん。」
「最近わざととぼけたりまでしちゃってホント頭回る分日向や影山よりタチ悪い。」
「おい月島っ、俺とまま子を一緒にするんじゃねぇっ」
「一緒じゃないから今でも語彙力についてはまま子さんが上だから、古臭いのが多いけど。」
「うぐっ。」
「ええやないの、まっとうな日本語やん。」
「うるさいよ。」
「まぁそれはともかくやな」
月島の説教を流すという芸当を披露しながら美沙は言った。月島がちょっと、と抗議するが聞こえなかったふりである。
「私クリスマス云々よりその後の日が大事やねん。」
日向と影山と山口が首を傾げる。
「後の日って。」
「あ。」
気がついたらしき谷地が呟いた。
「そっか。」
美沙は谷地に向かってニッと笑った。
「てゆー事があったんです。」
その日の放課後、男子排球部練習の休憩時間にて日向は2年の田中に報告していた。
「ふーむ、流石縁下妹。世間からズレてるにも程があるな。」
無駄に真面目くさった顔で言う田中に2年仲間の成田がボソリと呟く。
「お前に言われちゃ美沙さんが浮かばれないよ。」
「何をぅっ。」
「ていうか今の縁下が聞いたらお前確実に締められるから。」
うっと唸って田中の顔が青くなる。自分達の頭をはっている縁下力がそれはもう成田や木下までもが突っ込まざるを得なくなるレベルで義妹を溺愛しているのは田中でもわかっている。田中は大慌てで辺りを見回すが幸い当の力は副主将の菅原と話していてこちらの事は聞こえていないようだ。ここで木下がうーんと首をひねり、しかしあ、と何か思いついたように呟いた。
「もしかしてアレじゃね。」
「久志っ、何かわかんのかっ。」
同じく2年仲間の西谷がビョインと飛び上がる。
「アレだよほら、」
木下は今だ菅原と話すのに夢中の縁下力の方にちらりと視線を走らせた。
「縁下の誕生日。26日だろ。」
それを聞いた日向、影山、山口、田中、西谷はおおーと感心した。
「流石縁下妹、さりげにブラコンを地で行きよる。」
「うん、田中はもう3回くらい縁下に締められるといいと思うよ。」
「何だと成田てめーっ。」