第22章 【大人になってもご用心】
その時烏野高校男子排球部と青葉城西高校の男子バレー部は一堂に会していた。いつぞやのように交流会という名目であるが、
「何で私。」
縁下美沙はジトッと目を細めてボソリと言った。
「ごめんよ美沙。」
義兄の力が呟く。
「青城はボスがコアなファンだから止められなかったみたい。」
「せやけど優秀なおかみさん役がいてはるやん。」
「岩泉さんがどついたのに他の人が煽ったらしい。」
「絶対花巻さんや。」
「おーい、名指しはねーんじゃねえのままコー。」
「せやかて(そういうけど)大体面白がってる勢に入ってますやん。」
「人聞きわりいなあ、俺はせっかくだしいーんじゃねえかっつっただけだ。」
「完全に火に油を注いでますね。」
「まぁそう言うなって。」
ここでてかと口を挟んだのは青城1年の国見英である。
「俺は嫁に来てほしいって思ってなかったから。むしろ逆。」
「私嫁ちゃうし。」
「まだ言うのか、しぶとい奴。」
「国見よせって。」
金田一勇太郎が焦って同期を止めに入るが当の同期は聞く気がない模様だ。
「いやマジごめん。」
申し訳なさそうにいうのは青城2年の矢巾秀である。
「及川さんほんっと退かなくってさ。」
「どうしても美沙ちゃんって主張してたもんな。」
苦笑する渡親治からは苦労した様子が見て取れる。苦労が行き過ぎて闇落ちしない事を祈るばかりだ。
「でも意外と京谷は何も言わなかったな。」
ちらと見られた京谷賢太郎はジロリと渡を睨み返してから縁下兄妹に目を走らせるが美沙が小首を傾げて自分を見た為かぷいとそっぽを向いた。
「照れ屋か。」
「うるせぇ。」
矢巾に突っ込まれながらも京谷はズボンのポケットをゴソゴソして飴を取り出しながら縁下兄妹に近づく。
「ままコ、やる。」
「おおきに。」
「いつも悪いね、京谷君。」
「別に。」
「何気に京谷もままコファンなんだよな。」
そんな後輩の不器用な様を見てふぅと息をついて言うのは松川一静であるが実年齢より若干老けて見えるのは何故だろうか。そしてとうとう事の元凶と言えるこの男が口を開いた。
「美沙ちゃんのいいとこがどんどん拡散されてんだよ、俺のおかげだね。」
えっへんと言いたげなその姿は薄く腹立つものがあり、きっちり及川は後ろから頭をべしっとやられた。