第22章 【大人になってもご用心】
「前から思(おも)てたんやけど」
少年はジュースのおかわりをしながら言う。
「何でうちのおかんは皆と酒飲まへんの。」
念の為言っておくがこの少年普段は目上に敬語―関西風だが―をちゃんと使う。今いるメンバーが父の昔の仲間であること、更にその倅(せがれ)達が自分の仲間であるという近しい関係故にくだけているというだけだ。
「お、何だどうした縁下ジュニア。」
田中が興味深そうに尋ねると少年はや、そのと答える。
「おとんと2人の時は飲んでるん見とうから。」
少年の言葉にああとおっさん方4人はニヤニヤしだした。
「おいどうするよ。」
田中が言う。
「いいんじゃねえか、丁度力も美沙もいねぇし。」
西谷が乗っかる。
「あれなぁ。」
木下がまるで学生の頃のようにシシシと笑う。
「さてはまた高校の時に何かあったんやな。」
嫌な予感しかしないと言わんばかりに少年が呟くと成田が尋ねた。
「聞きたいかい。」
少年は頷いた。
「成田のおじさんが話してくれるんやったら。」
「待てこら縁下ジュニア、どういう意味だ。」
「田中のおじさんと西谷のおじさんは話の正確性が怪しいから。」
「ジュニアてめぇっ。」
「言う内容まで縁下そっくりかよ。倅が頭あがんねーっつう訳だわ。」
「いいから始めるぞ。」
成田が遠い日の思い出を語り始めた。