第21章 【初めてのアルバイト】完結編
そのまま力はほぼ一晩中義妹を離そうとしなかった。
そして翌日の朝、烏野高校男子排球部部室でのことだ。
「おはよう、縁下。」
早速成田が声をかけてくる。
「美沙さんバイト終わったんだってな。」
「うん。もうカオスだったみたいで気が気でなかったけど。」
「及川さんが通ってセクハラする上に伊達工も来てたんだっけか。」
「トドメにウシワカまで来るし。」
「ガチでカオスだな。」
話を聞いていた木下がクスクス笑うがふとあれ、と呟いた。
「縁下、アクセサリーなんかつけてんのか。」
指摘されて力は今更照れてしまい、うんああと曖昧な返事をする。そこへ丁度谷地がやってきた。
「おはよーございますっ。あっそれ」
アクセサリーを見て声を上げる谷地に力は首を傾げる。
「谷地さん、何か知ってるの。」
「それ前に美沙さんと一緒に見た雑誌に乗っていたアクセサリーですね。それって愛する者に贈るとその人と一生一緒に居られるジンクスがあるアクセサリーって書いていました。」
たちまちのうちに部室にいた野郎共がおおおおと反応し、力は顔が熱くなった。
「うちの美沙が、え」
動揺するのも無理はあるまい、常日頃から女子力何それおいしいのって顔をしていると田中に言われ実際占いだのおまじないだのにも特に興味を示さない義妹がそういう方向でくるとは思わない。
「やー、相変わらずお熱いこって。」
菅原がヒューと口笛を吹いたのを皮切りに他も好き放題言い出した。
「いよっ、溺愛夫婦っ。」
木下が囃(はや)し立てる。
「手続きはお早めにー。」
成田が煽る。
「くっそおおおお前ら兄妹マジで末永く爆発しろっ。」
田中が血の涙でも流すんじゃないかと思われる勢いで騒ぐ。
「力っ、ちゃんと大切にしろよっ。」
西谷が何か違う方向で応援する。
「美沙ちゃんもやるなぁ。」
東峰は呑気に微笑んでいる。
「どんだけなの。」
月島はひきつっている。
「あはは、美沙さん凄いねぇ。」
山口は苦笑している。
「何かよくわかんねーけどお幸せに。」
「馬鹿、影山それ今違うだろっ。」
影山は当人なりに頑張って考えたのだろうが逆に冷やかした状態なのに気がついた日向が突っ込む。