第21章 【初めてのアルバイト】完結編
「若利クンてばリストの奴ぜーんぶ再生してたもんネェ。」
「回を重ねる毎に向上しているのが興味深かった。」
「良かったな、電脳っ。」
「う、うん。」
「ところで電脳娘、兄はやはり迎えにきているのか。」
「はい相変わらず、って名前増やしなーっ。」
そんなこんなで1ヶ月、縁下美沙は初めてのアルバイトを勤め上げた。働いている間中及川が足繁(あししげく)く通ってきてはセクハラに及ぼうとし意外にも牛島と五色が何度もやってきたりさりげなく面白がっているらしき女川と小原が来たり、更には美沙の知らない他校の金髪刈り上げ―後で美沙が語った所によるとどこぞのヤンキーかと思った―と他が来たりなど割と色々あった。
勿論義兄の力が部内から冷やかされ烏養には呆れられ武田には苦笑されても業務終了後欠かさず迎えに来ていたのは言うまでもない。
そうしてアルバイトがあけてしばらくしてからの夜のことだ。
「兄さん。」
美沙が力の部屋にやってきた。そおっという感じでドアから顔を覗かせている。
「どうした。」
力は尋ねながら義妹を部屋に入れてベッドに座らせてやり、自分も横に座る。座った義妹はしばし何やら恥ずかしそうにモゾモゾしてから後ろに回していた両手を力の前に差し出した。
「これ、あげる。」
差し出された両手にはプレゼント仕様の包みが乗っている。礼を言いつつ何だろうと思いそれを受け取った力は早速開けてみる。中からはアクセサリーが出てきた。
「これを俺に。」
聞くまでもないとわかりつつもつい聞くと義妹は顔を赤くして頷く。
「それ欲しいって思(おも)てたとこに丁度バイトの話もろて。」
「俺の為に。」
ついつい聞き返すと美沙は更に顔を赤くしとうとう目をそらし始め、こみ上げてくる何かを感じた力は思わず義妹をガバッと抱き締めていた。
「ちょ、兄さん。」
驚いたのか恥ずかしいのか両方なのか義妹がモゴモゴ言うが勿論力は離すつもりがない。愛する義妹が人見知りと出不精をおしてしかも客のセクハラ―全て及川だが―を耐えて働いたのだ、自分の為に。喜ばずにおられようか。溢れる思いが押さえきれなかった力は勢い余って義妹と一緒にベッドに倒れ込む。
「嬉しいよ、美沙。」
そっと義妹の耳元で囁くと義妹はきゅうとしがみついてきた。