第21章 【初めてのアルバイト】完結編
「う、うちの兄さんはホンマ他所で一体何や思われてんのやろ。」
「狂人レベルのシスコンに決まってんだろがこの半分ボケ。」
「ちょっと二口やめなさいよ、ごめんね主将がこんなんで。」
「ご苦労お察しします。」
「隠れブラコンの半分ボケよかマシだっての。」
「二口やめろって、何だってそんなに美沙さんに絡むんだ。」
「好きなのか。」
「茂庭さんは黙っててください、パンタロンはキショいじょーだんやめろ。」
二口は喚くも女川は聞き流す。
「てゆーか俺らこの人の名前聞いてなかった。」
女川にじっと見られて美沙はいちいち聞くかと思ったが初対面連中は聞きたがっている雰囲気丸出しである。いいのか悪いのか他の客もいなかったので笑顔が引きつりながらも美沙は自己紹介した。
「ええと、烏野高校1年縁下美沙です。兄は男バレの6番縁下力です。よろしく。」
烏野と勿論反応された。
「烏野のバレー部に関西弁の人なんていましたか。」
早速吹上が小原に尋ね小原はいやと答える。
「皆が皆覚えちゃいないけど関西弁がいたら目立つから覚えてると思う。」
「か、烏野の選手の妹さんっ。」
「黄金川は落ち着いてね。でも私も不思議。」
「おいお前らこいつの事情いちいち聞くんじゃねーぞ面倒くせえから。」
口を挟む二口、だがしかしバレーを除いた日頃の行いがよろしくないのかこれもスルーされた。
「ああ、」
いつもどおり悲劇ぶらずに美沙は言う。
「兄は関西弁じゃないです。私両親がいなくて育ててくれたばあちゃんが関西の人だったけど高校上がってから亡くなって縁下さんちに引き取られた口なので。」
お決まりのパターンで一瞬伊達工の初対面組は沈黙した。
「凄い話聞いちゃった。」
しばしの沈黙の後作並が身を震わせる。
「へー、ドラマみたい。」
女川が呟く。
「世の中色々って事か。」
吹上が言って小原がでもと言った。
「まあまあ波乱万丈な感じの人生だけど面倒くさいって何だ。」
答えはすぐに出た。ブスッとする二口、特に表情の動かない青根、苦笑する茂庭と笹谷、聞くのは2度目の癖に何故か涙ぐむ鎌先の後ろで鎌先以上に目に涙をためて唇をぐむむむと結んでいる約1名がいる。そして