第20章 【初めてのアルバイト】後編
そんな流れになっているとは知らず縁下美沙は本日も勤務中、烏野高校男子排球部の連中は練習で汗を流している。
「とりあえず美沙さん頑張っててよかったですね。」
休憩時間、谷地が力に言う。
「ありがとう、俺もホッとした。」
「ちゃんと労(ねぎら)ってやったかー。」
「お前に言われるまでもないよ、田中。」
実際力はあの後帰宅してから早速義妹を部屋に引き込んでいたのだ。
「初日お疲れさん。」
ベッドに一緒に座る義妹の頭をそっと撫でると義妹は甘えたモードが発動したのかぎゅうとしがみついてくる。
「めっちゃ疲れた。まさかやっちゃんらも来ると思わんかったし。」
「だけど知らない人がいっぱい来るのによくやってたよ。」
「ホンマに。」
「うん。」
美沙はふにゃと外ではしない笑い方をして力の胸にスリスリグリグリと顔を擦り付けた。
「明日も頑張る。」
「うん、頑張って。」
まあつまりリア充爆発しろってな話だった訳である。
「しっかしまああれだな」
田中が続ける。
「やっと縁下妹も独立の第一歩だな。」
「帰りに迎えに行かないと。」
「は。」
この時力の発言を聞いた田中は成田ですら気の毒と思うレベルで固まっていた。
「帰りに迎えに行く。同じくらいの時間になると思うから。」
勿論田中だけに留まらず烏野の連中はほぼ固まっていた。固まっていないのは菅原でこいつはブーッと吹き出した上にあっはっはっと腹を抱えて笑っている。
「スガ、笑いすぎ。」
慌てる東峰だが菅原はだってと涙まで浮かべて言う。
「あまりに予想通りだもんよー。」
「菅原さん俺の事一体何だと。」
「ん、溺愛保護者。」
さらりと言われて力は動揺する。