第20章 【初めてのアルバイト】後編
恐ろしい事に話は白鳥沢、青城で止まらない。更にある日のここは伊達工業高校である。
「は。」
主将の二口賢治が眉をひそめてチームメイトの青根高伸に聞き返している。
「あの烏野の半分ボケが店番。」
青根はそうらしいと頷く。
「あんなボっケボケに接客なんて出来んのか、何かの間違いじゃね。」
ケッとばかりに言う二口に青根はそうとは思えないとボソッと呟いた。
「この辺に関西弁はそういない。」
「まあそうだけどどうでもいいわ。」
「そうか。」
「何だお前、わざわざ帰りにでも寄る気か。」
「もしあいつならちょっと挨拶したい。」
「必要あんのか。」
「俺の勝手だ。」
お前一体どうしたと二口が言いかけたところで青根さんっとでかい声が上がる。1年の黄金川寛至だ。
「どっか寄られるんですかっ。」
「ああ。」
「俺もお供しますっ。」
「やめろ馬鹿ヤロてめーが行ったら大騒ぎになるわっ。」
「何でですかっ二口さんっ。」
「あの半分ボケのパターンからしてだな」
「半分ボケってどなたっすかっ。」
「だああああああもう面倒くせえええええっ。」
「ちょっと二口無駄にうるさい。」
マネージャーの滑津舞に言われて二口は無駄言うなと喚くがスルーされ、しかも他の連中までもが何事かと興味を示す。
「どこかのお店に知り合いでもいるんですかね。」
1年リベロの作並浩輔が呟き、2年の小原豊がそういやと答える。
「何か茂庭さんらの知り合いに関西弁の女子がいるとか何とか聞いたな。」
「にしてもこの流れって。」
面倒臭そうに呟くのは女川太郎、加えて1年の吹上仁悟までもが反応する。
「主将が騒いでるあたり何か因縁でもあるんでしょうか。」
「二口の事だから余計な事言ってしっぺ返し食ったんじゃないか。」
小原がさりげなく核心をついている間も二口、青根、黄金川のわあわあは止まらない。
「半分ボケは半分ボケだっ、とにかく黄金川はくんなっ、以上っ。」
「全然わかりません理不尽っすっ。」
「俺は構わない。」
「ちったぁ構えっ。」
喚き散らす二口はとうとう滑津にマジうるさいとノートで頭をはたかれた。
「何なんだろう本当に。」
作並が呟いた所で女川が言った。
「俺らもついてくか。」
二口、青根、黄金川、滑津以外のメンバーは女川をじっと見つめたのだった。