第19章 【初めてのアルバイト】中編
そうやって力が幸い暴走することもなく烏野の連中は合流した。
「まだ初日だけど」
成田が言う。
「結構美沙さんうまくやってたな。」
「おうっ、人見知りっぽくなかったぞっ。」
「ちゃんと目ぇ合わせて挨拶してたよな。いやー進化してるわ。」
感心して言う木下、続けて口を開くのは月島だ。
「まぁ、ままコさんにしてはいいんじゃないですか。」
「意外に他校の人達と関わってるのがうまく作用してるかもしれませんね、清水先輩。」
「そうね、仁花ちゃん。」
「美沙がいらっしゃいませーって言ってんの何か面白かったな、影山。」
「つーよりおおきにって言わないままコが何か変で仕方ねぇ。」
「影山もすっかり美沙さんの関西弁に慣れちゃってるんだね。」
「やー新鮮だったわー、店番美沙ちゃん。」
「うん、頑張ってて良かった。」
「旭、お前は親戚か。」
「大地、今回はお前に言われたくない気が、うん、気がその、する。」
「お、髭チョコがいっちょまえに。」
「それよりよ、」
ここで田中が言った。
「当の兄貴としてはどうよ、妹のバイト初日。」
「何かその」
話を振られた力は目を伏せて片手で口元を覆う。
「初日からちゃんとやれてるようで良かった。」
「親かっ。」
目をうるませる力に田中が突っ込むが実際力は親の心境に近いと言えた。
さて、そんな中美沙はもちろん烏野の連中は知らない所でまた新たに妙な流れが起きていた。
白鳥沢学園高校男子バレーボール部の部室での事だ。
「ねーねー皆この後空いてる。」
突然疑問形で言い出したのは天童覚である。いきなり何だよと首を傾げる瀬見英太に天童は実はさと答えた。
「他校のダチからきーたんだけど、ほらここからちっとばかし行ったとこの古っぽい店。」
「ああ、何かあった気はする。」
「そこに今関西弁っぽい女子がいるんだってー。もしかしてままコちゃんじゃね。」
「誰だ。」
真面目に尋ねる主将の牛島若利にメンバーの多くは固まった。一番話した事があるしままコというのが相手が使うハンドルネームであることも聞いているはずなのだがどうやら全国クラスである天下のウシワカにとって本名もハンドルネームも記憶が持続しづらい種類の相手らしい。