第19章 【初めてのアルバイト】中編
烏野の男子排球部3年の野郎共まで来たのだ、こうなるといくら美沙でもオチは見当がついていた。
「いらっしゃいませー、はいやっぱりな。」
「お前ね、のっけからそれか。」
義兄の力は苦笑するが美沙はぷぅと頬を膨らませる。普段外ではほとんどしない顔だ。
「だってやっちゃんから澤村先輩までみんな順番に来るんやもん、兄さんが来(こ)ぉへん訳ないやん。」
「そりゃ心配するよ、世間知らずの人見知りが初バイトで初接客ってんだから。」
「さてはあれやな、逆に兄さんの凸(とつ)を心配してみんな一緒にきたんやな。」
「大体合ってるかな。」
「心配しすぎやて兄さん。」
「お前が妙なの引き寄せるんじゃないなら無用な心配なんだけど。」
「いや私別に引き寄せてへんし。」
「及川さん筆頭にあんだけ色物ファンがついてる癖によく言えるな。」
「知らんもん。」
言っている間にまた客が来て美沙はすぐいらっしゃいませーと反応する。上の方の棚の商品を取りづらそうにするその客のところへすぐ行って商品を下ろす姿を義兄がじーっと見ている事には気づかない。
「こちらでよろしいでしょうか。ありがとうございます。」
会計を始める美沙のまだたどたどしいけれど懸命な姿を力が微笑んで見ていることも気がついていなかった。