第3章 【着せ替え人形】
「お前がそういう奴でホントに良かったよ。」
なんだかんだで人の良い性質に対して申し訳ないなと思いながら力は愛する義妹の肩をそっと抱いた。
という訳で結局その後日縁下美沙は着せ替え人形状態になった。
「あの、兄さん。」
「何。」
「このお洋服達の出処(でどころ)はどこなん。」
「清水先輩と谷地さん。」
「どーゆーことっ、清水先輩は前にフリフリのお洋服くれたけどっ。」
「ダメ元で聞いてみたら清水先輩が何かまた手持ちを貸してくれた。谷地さんもノリノリで知ってる人から借りてきてくれた。」
「清水先輩とやっちゃんは一体。というか何でどれもフリフリなんっ。」
「知らないよ、よっぽどお前に着て欲しいんだろ。」
「兄さんは。」
美沙は何も考えずに尋ねたのだが何故か義兄は顔を赤くする。
「ま、まぁ、見てみたいとは思う、かな。」
「そーなん。」
並べられた服を眺めて美沙はしばし考える。しかし腹を決めると早いのもまたこの義妹の特徴である。
「お着替えしてくる。」
服達を抱え、美沙はすくっと立ち上がり一旦自室へ引っ込んだ。
そしてミニミニ撮影会である。
「もうちょいこっちよって。」
「こぉ。」
「あ、そこ。じゃあ撮るよ。」
「あい。」
「オッケー、次。」
「またお着替えやね。」
「ごめんよ、頑張って。」
そうやって美沙愛用のスマホに普段は絶対着ないようなフリフリ衣装を着た自分の写真がいっきに増えた。
「ううう、やっぱし何か恥ずかしい。」
「大丈夫、似合ってるよ。」
「兄さんは優しいからそない言うてくれるけど。」
「美沙、俺だってそんなに上手いこと言える訳じゃないよ。ところで調子に乗ってたくさん撮っちゃったけどこれ1枚1枚送ると流石に迷惑になるな。」
「そこは任しといて。」
「またそのアプリは何。」
「画像加工。コマ割りして複数の写真配置したり枠つけたりシールみたいなん貼り付けて飾ったり出来る。」
「スマホ大好きは流石だな。」
「もういっそのこと色々手ぇ入れたるもんね。」
「お前ホントやる時は徹底的だな。」
義兄妹はああでもないこうでもないと言いながら写真を選定し、美沙はそれらをアプリでシャッシャッと加工したのだった。