第15章 【どうしてこうなった】前編
「いくらうちの美沙がたまに突拍子ないっつってもそこまでしないと思うよ。」
「だといいんですがねえ。」
「月島やめてくれ。」
「安心して縁下、青城の人が美沙ちゃん囲みそうになったら阻止するから。」
「清水先輩も来る前提で仰るのは勘弁してください。」
「しかし相手は美沙さんである。」
「木下、お前もそんなに俺を一級フラグ建築士にしたいか。」
そんな話をしているうちに妙な事が起きた。
「ゴルァッお前らぁっ、よそに来てまで縁下妹の話してんじゃねえっ。」
「こんのボゲェッだからあの半分ボケはこねえっつってんだろっ。」
烏野側も青城側も一瞬静まりかえり、烏野のコーチ烏養繋心と青葉城西の副主将岩泉一は思わず顔を見合わせる。烏野の顧問である武田一徹が苦笑し青城側では入畑と溝口がキョトンとする。お互い何か言いたげな烏養と岩泉だったが何も言わずに終わった。
「縁下。」
代わりに烏養がボソリと呟いた。
「お前んとこの妹、青城にも顔割れてんのか。」
「美沙なので。」
力は曖昧な笑みを浮かべて答えた。
入畑監督と溝口コーチ及びレギュラー以外の部員は事が全く理解できていなかった。
「ったく何だか知らないが浮つきやがってこれだから最近の若い奴は。先週練習試合の話をした時からこっちずっとこうですね。」
入畑はうむと頷き、まるっきしねえと苦笑する。
「アイドルでも来るのを楽しみにしているような節があるな。」
「そんな馬鹿な。」
溝口が呟いたところで開いている体育館の入り口、そこから明らかにこの辺りのものではない抑揚でしかも息切れ気味に失礼しまーすっという声が聞こえた。