第19章 ・遭遇
そうしてしばらく時間が過ぎた。
「じゃあな、ウシワカ妹。」
「こちらこそお時間を頂いてありがとうございます。」
「お前誰にしてもそんなんか、疲れるぞ。」
「こういうタチですので。」
「程々にしとけよ。」
「お気遣いありがとうございます。」
「いいって。おら、そこのクソ川も行くぞ。」
声をかける岩泉、しかし及川は座りこみぶぅと不貞腐れてそっぽを向いている。途中でほったらかされたのが余程気に入らないらしい。
「鬱陶しい面しやがって、ケツ蹴られてーのか。」
「知らないもんねだ。何さ俺が先声かけたのに岩ちゃんばっか文緒ちゃんと喋ってさー。」
「何語喋ってんだおめ、マジ蹴るぞ。」
「恐れ入りますが、私とそんなにお話になりたいものですか。」
「だってあのウシワカちゃんの妹でしょ、興味湧くじゃん。」
「私はご覧の通り世間知らずで話題がありませんからすぐ飽きると思いますが。」
「ウシワカちゃんはアレだけど妹ちゃんは随分謙虚だね。」
「私は色々弱いので。」
「弱いとは。」
「あの。」
「岩ちゃんとあんだけ言い合っといて弱いとは。」
「何だか不思議扱いを受けているような気がしてきました。」
「流石天然だわ。」
「ですから私は違いますっ。」
「まだ言うかこいつは。」
「ウシワカちゃんに会ったら言っとかないとねー、文緒ちゃんをもっと勇気づけてやってって。」
文緒は頭が痛む思いがする。まさか天下の及川徹がこんな面倒な人物とは思わなかった。
「兄は忙しいのでそんな暇など。」
そんな文緒の呟きに及川は立ち上がって目を見開いた。
「お馬鹿なお嬢様だねぇ。」
文緒が聞き返す間もなく及川はニィと意味深に笑う。
「あのウシワカちゃんが君に1人でウロウロするなって言うんでしょ。」
「それは私が何をするかわからない奴と思われているのだと。」
「本気で言ってるの、それ。もうちょいどういう事かよーく考えなよ。ウシワカちゃんは、君のおにーちゃんは腹立つレベルで思ってる事まんま言う奴だからさ。」
言いたい放題言って及川は文緒が何か言う前にへらりとした態度に切り替わる。