第19章 ・遭遇
「で、お名前は。」
及川は諦めが悪かった。
「結局聞くのかよ。っといけねえ、こっちまだ名乗ってなかったな。岩泉一、青城3年。副主将だ。そこの馬鹿とは腐れ縁。ほれクソ川、おめーも聞くくらいならまず名乗れ。」
「いちいち一言多いってばっ。あ、言うまでもないかもだけど一応ね、青城3年及川徹、セッターで主将だよ。君のお兄ちゃんとはそうだねえ、仇同士ってとこかな。」
戸惑いはしたが向こうが名乗ってきたのなら応えないわけにいかない。文緒はふぅと息をついた。
「申し遅れました、牛島文緒といいます。白鳥沢学園高校1年です。兄は天然なので皆様がお気に触る事もあるかとは思いますがどうかご辛抱いただければと思います。」
文緒が名乗り終わった途端、及川と岩泉がブーッと吹いた。
「文緒ちゃんって言うんだ、て、丁寧にありがと。」
「お、おい、及川、笑うんじゃねー。」
「岩ちゃん無理、それ絶対無理。」
2人はお互いを小突き合い、吹き出しそうなのを堪えている様子だ。しかもよくわかっていない文緒はここで自身も天然ボケを発揮した。
「そんなに笑う所でしたでしょうか。」
こいつは笑われないと思っていたのか。おかげで事態は悪化の一途を辿った。及川が腹を抱えてアハハハハハと笑い出した。ここが外でなければ転がっていたかもしれない。岩泉はまだ頑張っていたがそれでも向こうを向くその肩はプルプルと小刻みに震えている。
「あのお二人共、その」
「おいお前、」
困惑する文緒になおも笑いが堪えきれずにプルプル震える岩泉が言った。
「顔に似合わずなかなか言うじゃねえか。」
「そうでしょうか。事実なのですが兄は認めたがらなくて。」
「あ、後な、」
「はい。」
「お前も兄貴の事言えねーぞ。」
文緒は飛び上がった。
「兄様はともかく私は違いますっ。」
これには流石の岩泉も一瞬固まった。しかし次の瞬間ブチッときた彼は一気に爆発した。