第19章 ・遭遇
「仲が良いんですね。」
「わかるんだ。流石俺と岩ちゃんの超絶信頼関係だね。」
「んなもんはない。」
「ひどいっ。」
厳しい事を言いつつも岩泉からは何となく及川との絆が伺える。今も同性の友がいない文緒はいいなぁとコソッと思った。
「にしてもそっかあ、月バリ見てたんだ。」
一方岩泉にボロカス言われた及川はもう復活している。
「もしかして女バレなの。」
「いいえ、部活には一切入ってません。運動はからきしです。兄がバレーボール部でしてついでに見せてもらいました。」
「バレー部におにーちゃん。」
及川が眉をひそめる。
「そういやその制服見た事あると思ったら白鳥沢だよね。」
呟く及川に岩泉がおい、と言った。
「やめろ、あいつの関係者とは限らねーだろ。」
文緒は何かの予感がした。義兄の知名度を考えると自分の事が色々なところへ知れるのは時間の問題だと判断する。判断後の対応は早かった。
「兄は牛島若利です。」
わかってはいたが途端に空気が凍りついた。及川と岩泉の顔色も一気に変わる。
「マジかよ。」
しばらくの沈黙の後に岩泉が呟く。声がかすれていた。
「モロ関係者だったんか。」
「へー、面白い事もあるもんだね。」
及川の方は軽い口調で言うが文緒は何だか無理しているように聞こえると思う。
「あのウシワカちゃんに妹がいるなんて初耳。」
当然だ、少し前までいなかったのだから。しかし流石にそれを言うのは憚られた。
「で、ウシワカちゃんの妹ちゃんは何てお名前。」
「クソ川やめろ、手当たり次第か。」
「聞いてどうなさるのですか。」
妹である事だけにとどまらず名前まで聞かれるとは思わなかった文緒はつい聞き返す。及川の横で岩泉もそら見ろ言われてんじゃねーかと呟いているがしかし及川はへらりと笑った。
「別に悪い事しないってー。ここで会ったのも何かの縁でしょ、だからさ。」
「変わった方ですね。」
思ったままをつい口にした文緒に岩泉がブーッと吹き出し、及川はゲーンッと衝撃を受けた。
「大人しいお嬢様な顔してキツイっ。」
「流石兄妹だな、どストレートはそっくりか。」
「どうでしょう。」
文緒は濁した。確かに牛島の家とは極々薄い血の繋がりがあるが関係しているかは何とも言えない。