第17章 ・月刊バリボー
「お前もヒナタショウヨウのような事を言うのか。」
ジロリと文緒を見る目はかなり怒っている。
「お許しください兄様、私は兄様と日向達とで何があったのかは知りません。」
「知る必要はない。」
「そんな。」
無茶な話だ、言われねばわからないものをどうやって察しろというのか。
「何も知らないのなら迂闊な事を言うな。」
文緒はしょんぼりと俯く。申し訳ありませんと言いかけていやでも待ってと思った。それは顔に出ていたらしい。
「何だその目は。」
威圧されて—無自覚の可能性が大だが—文緒は一瞬怯んだ。
「別に私がバレー知る知らないの話ではなくてその」
流石に怖くて震えがくる。若利の片手が文緒に伸ばされた。まさか叩かれるのかと文緒は身を縮める。しかしその手はそっと文緒の肩に乗せられた。
「こっちを向け。」
若利の声はもう怒っていなかった。抑揚が少ない為わかりづらいが文緒はボツボツ感じられるようになっている。それでもこわごわ顔を上げると若利が自分を見つめていた。
「遠慮はいらない。思う所を言ってみろ。」
「兄様。」
「お前を知る為に必要だ。」
文緒はえと、と少し戸惑ってから口にした。
「なんと言うか、その、環境とか考え方の違いはどこでもあり得てそれがぶつかり合うのが世の常かと。バレーボールでもそれは一緒で色んなチームで考え方があるように思えたのですがどうなんでしょう。」
若利は返事をしない。ますます怒らせたのかと文緒は不安にかられる。
「それは否定しない。」
やがて若利は重々しく言った。
「だが俺には納得出来ない事がある。」
「それも何となくですがわかります。」
怒られなかった事にホッとしつつ文緒は微笑んだ。
「結局お前はどうなのだ。」
まっすぐ切り込んでくる若利に文緒は応えた。
「私には色々な考えがあるんだなという事とそれぞれを全否定するつもりはないという事しか言えません。ああでも兄様は是非信じる方を進んでください。私には何も出来ませんが。」
「何故お前は一言多い。」
「え。」
「まず自分を否定するのをやめろ。そしてこれからも出来るだけ側にいろ。出来ないとは言わさん。」
キョトンとした文緒は返事が遅れた。